「一刻も早く子どもが欲しいの」。地方暮らしに馴染めず、夫婦生活が破綻した妻のとった行動とは

ある人物から連絡があったのは、そんな矢先のこと。浜松に暮らし始めて1年が経過したころだ。

それは、有紗さんの大学時代のクラスメイトだった。

「大学のクラ友だった菜々が、私がSNSで発信していた料理教室の投稿を見て、“もしかして有紗?”ってDMをくれました。そういえば彼女、浜松出身で、卒業後はUターン就職してたんです。学生時代はそこまで親しくなかったんですが…」

友達がいなかった有紗さんは、彼女からの連絡に、藁にもすがるような思いで飛びついた。

そして彼女と会うことになり、溜まりに溜まった1年分の愚痴を聞いてもらった。そのころ有紗さんが最もストレスを感じていたのは、義母との関係だった。

「義母は、うちに頻繁に来るんです。あるとき食後にお茶が飲みたいっていうから、両親がパリ旅行のお土産に送ってくれた紅茶をいれました。そしたら義母から“食後にお茶って言ったら、普通は緑茶でしょ”なんて小言を言われて。

それ以外にも、冬になったらやたらみかんをわけてくるんです。お裾わけとかのレベルじゃなくて、何十個も一気に箱で送ってきたりとか。みかんは美味しいけど、二人暮らしでそんなにたくさん食べられるわけないのにどんどん送ってくるので、うんざりしていました」

どれもちょっとしたことだが、そういった理解できないことが重なって、有紗さんのストレスは蓄積していった。

そんな愚痴を菜々さんにぶちまけたところ…。

「菜々に、大爆笑されました。それは、浜松人あるあるだよって」

菜々さん曰く、静岡の人は本当によく緑茶を飲む。お年寄りだけでなく、子どもや若者も日常的に飲むのだそうだ。菜々さんも毎日朝晩緑茶を飲み、食後の飲み物といえばやはり緑茶。

また、冬にはみかんも大量に食べ、親戚や知り合い同士送り合ったりするのも一般的。みかんの入ったダンボールが家にいくつも置かれているのは、決して珍しい光景ではない。

浜松の“やらまいか精神”に触発されて・・・


「それを菜々から聞いたとき、義母には一切悪気がなかったのだとわかって、恥ずかしくて耳まで真っ赤になりました。同時に気がついたんです。マイナス思考になるあまり、すべてのことを否定的に捉えるようになっていたって」

落ち込んでいる有紗さんに向かって、菜々さんはこんなことを言ったそうだ。

「浜松の人たちには“やらまいか精神”というのが根付いているのよ。有紗も現状に満足できないなら、何かにチャレンジしてみたら?」

“やらまいか”というのは“やってみようじゃないか”という意味の方言で、新しいことに果敢に挑戦していく浜松人の気質を表しているのだとか。

浜松に、ホンダやスズキ、ヤマハなど数々の世界的企業の発祥の地であることも、そんなスピリットを証明している。

「その話を聞いたときにハッとして。毎日嘆いて不平不満を言っている暇があるなら、何かが変わるように私も自らチャレンジしてみようって思いました」

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