SPECIAL TALK Vol.60

~自分と他人との境界線をどう越えていくか、その先に世界平和があると信じている~

両親の離婚を機に「人」について考え始める

金丸:先程、ご両親の離婚は大きな影響があったとおっしゃいましたが。

石山:ええ。離婚したとはいえ、両親からの愛はすごく感じていたし、私の誕生日には、父母もそれぞれ彼氏彼女を連れてきてみんなでお祝いしてくれました。ただやっぱり、父と母が愛し合って私が生まれてきたはずなのに、離婚してしまったことで、自分はなぜこの世に命を授かったのかが、よくわからなくなってしまったんです。

金丸:なるほど。

石山:いろいろと思い悩んだ結果、今思うと笑ってしまうのですが、13〜14歳の頃には「私はアドルフ・ヒトラーの生まれ変わりなんだ」と考えるようになりました。

金丸:ええっ、どういうことでしょうか?

石山:小さい頃から戦争映画が好きで、特にホロコーストに強い関心がありました。私が生まれたのは、ヒトラー生誕のちょうど100年後なんです。学校の授業で学ぶ前から戦争と平和に強い興味があったことが、そう思ったきっかけだと思います。

金丸:だから生まれ変わり。しかし、中学生とはいえ、ちょっとぶっ飛んでいますね(笑)。

石山:今思うと笑ってしまうのですが(笑)。でも当時は、「私は世界平和を実現するために生まれたんだ」と思い込んでいたんですよ。ちょうどその頃、『世界がもし100人の村だったら』という本が流行しました。そこから世界に興味を持ち、いまだに「世界平和」が私にとってキーワードです。

金丸:私が中学生のときなんて、超単純でしたよ。勧善懲悪の世界に生きていましたね。

石山:16歳のときには、親にお金を借りて、英語も何もしゃべれないままひとりでバックパックの旅に出て、アウシュビッツを訪問しました。

金丸:すごいですね。

石山:さすがに無謀だったと思います。その旅は死にそうなくらい大変で。『我が闘争』も16歳で読み切りましたね。当時、どこまで理解できていたかはわかりませんけど。

金丸:では活発だった小学生時代からは一変して、中学校では落ち着いた、という感じですか?

石山:というわけでもないんです。見ての通り何事にもオープンな性格なので、学級委員もやったし、部活はバスケットボール部に入って楽しんでいました。

金丸:キャラクターが幅広いですね。

石山:はい。一方では、みんながいないところで図書館に行って、ホロコーストの写真集をコソコソと見るのが好きで。

金丸:ホロコーストの写真集……。見てもあまり楽しいものではなさそうですが。

石山:言葉にするのが難しいんですけど、戦争は矛盾の塊です。その複雑性や、むき出しの生と死を見て、こみ上げてくるものがあるんです。そもそも、戦争映画が小さい頃からなぜか好きでしたし。

金丸:もちろん殺し合いのシーンが好きとか、そういうことではないですよね。

石山:そうですね。殺し合いが好きとか、かわいそうとかいうよりも、戦争に翻弄されて、生と死の間をさまようような場面や、政治的イデオロギーと人類がもともと持つ良心とのジレンマにすごく興味を引かれました。

金丸:いつ頃から?

石山:4、5歳くらいですかね。父が戦争映画を見せてくれたのがきっかけだと思います。レンタルビデオ屋に行くと、戦争映画コーナーにずっと張り付いているような子どもでした。

金丸:一番好きなのはどの映画ですか?

石山:『戦場のピアニスト』です。ほかにも『プライベート・ライアン』『シンドラーのリスト』と比較的ベタなものが好きで、特にホロコーストを扱った映画に興味がありました。

金丸:それはまたなぜでしょう?

石山:たとえばドイツ人とユダヤ人は、政治・経済的なマクロな部分では対立はしているけど、個人と個人ではわかり合えるはずだと考えていたからだと思います。大人たちが対立していても、6歳の子ども同士だと、そんなの関係なく友達になってしまうはず。それってどういうことなんだろう。戦争映画や写真集を見ていると、いろいろと考えるのが止まらなくなって。

金丸:怖いもの見たさではなくて、人間に対する洞察が鋭いですね。子どもの頃から社会派だ。

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