毎回乗ってくる“車と男”が違う人妻。彼女が選択した、幸せの形とは

そんな由希子が選んだ男性は、意外な事に全く正反対のタイプだという。

「彼はレースでいつも最下位争い。私より前にゴールした事は一度もないわ。背は高いけど痩せ型で色白だし、どちらかというと弱々しい感じ」

その彼からは「レース中に、すぐに姿が見えなくなる君をいつも後ろから追いかけているうちに、好きになっていたんだ!」と告白されたという。彼は絵に描いたようなお坊ちゃまで、平和主義。彼女の事が珍しくて面白くて仕方がなかったよう。

「私はどちらかというとS気質、彼はM気質だったので相性ピッタリ!私の事は自由にさせてくれそうだったし、結婚もいいかもね、とそんな感じです」

そして彼女は結婚と同時に彼が住む東京へ移り住み、そのまま妊娠・出産と続いたためレースの世界からは離れて専業主婦として暮らしていた。

彼も親の倉庫運輸業を本格的に継承した事もあり、すっかりサーキットからは足が遠のいた。しかし、車好きな二人は会社の空き倉庫に好きな車を何台か保管していた。

「その頃から、駐車場に困っている友人のスーパーカー等を一緒に預かったりしていました。次第に『うちの車も預かって欲しい』と私たち夫婦の元に相談が来ることが増えました。そこで、スーパーカー専用ガレージを運営することを思いつきました」

都内でそのような車の駐車場というのは悩みの種だ。車の価格が高価なだけに、セキュリティを気にする人も多い。スーパーカーを持つ男性の中には、車自体を家族に内緒にしている人もいる。

「元々私の周りには車好きが多いというのもあって、貸ガレージの案を話したらとても反応が良かったです。空き倉庫を改造し、スーパーカーに必須の電源と排気システムを付け、高いセキュリティとプライバシーを確保した高級車専用の貸ガレージを都内にオープンさせました。宣伝なんかしなくても、あっという間に満車になりましたね」

スーパーカーオーナー間の口コミのお蔭で、ガレージは常に予約待ちがあり、しかも携帯1本あれば自宅で子育てしながらでも仕事ができる。その後もガレージを次々とオープンさせたという。

「思った以上に売上が伸びたので、7年前に別会社を作り私が代表になりました」

ガレージの顧客との世間話はもっぱら車の話である。サーキットを走っていた彼女はもちろん車の話にも強い。

顧客から「最近、敢えてディアブロに乗ってみたいと思うんだけど…なかなか良い出物がなくてねぇ…」と聞けば「…その車、契約があったような?最近動かしてなさそうだし程度も良さそうだったわ…聞いてみましょうか?」

そうやってオーナー同士を引き合わせているうちに、彼女の所にスーパーカーの売買相談が入ることが徐々に増えてきたという。

「気が付けば月に何台かは、車を紹介したりされたりするようになっていました。忙しいオーナーに変わって、今日のように私が車の鍵を預かって横に乗せたり試乗してもらったりする事もあります」

車の紹介は貸ガレージ業のついでであり、車好きな彼女にとって暇つぶしの1つのようだ。自由で楽しい毎日を送っているように見える彼女だが、どうもご主人について気に入らない事があるという。

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