“脈なしサインを読めない男”。女子にドン引きされる、NGアプローチとは

菜穂に猛烈アプローチをかけてきた男というのは、外資系コンサルティングファーム勤務の32歳、四宮健吾。

菜穂は食事会の類が好きではないらしく、彼氏がいる時は絶対に行かないし、誘われても半分以上は断ってしまうという。

「その時は同じ秘書室で働く先輩に誘われて、彼氏もいなかったから、珍しく食事会に参加したんです。そこで四宮さんと出会いました。もともと軽いノリが苦手なので、私は端の席で大人しくしていたんです。四宮さんは遅れてきて、空いていた私の前の席に座りました。それで自然と会話が始まったんですが」

学生時代ラグビー部だったという彼は、社会人となった今も体育会系のノリが抜けない男だった。声が大きく、人の話をまるで聞かない。

「私の最も苦手とするタイプの男性だったので、最初から見えない壁を作っていました。秘書室にいるからでしょうか、普段接する人たちは、あえて言葉にしなくても空気を読んでくれることがほとんど。だけど四宮さんのようなタイプには、見えない壁の存在なんてないも同然なんですね」

彼女の無言の圧力などものともせず、四宮は積極的に菜穂に話しかけてきたという。

「『旅行とか好き?』って聞かれて。特別に旅が好きかと言われたら、そんなこともないんですけど、まとまった休みが取れる時は大体旅行しているので、『好きです』って答えたんです。そしたら『俺も!』ってやたら興奮し始めて」

図らずも彼を喜ばせてしまい、菜穂は戸惑いつつ愛想笑いで誤魔化した。

「でも、完全に引いてる私に気づくそぶりもなくって、『じゃあさ、どこの国が好き?』って聞いてきたんです。だから『ハワイ…かな』って答えました。私としては、これ以上四宮さんを興奮させないように、無難な国を答えたつもりだったんです。でも、彼の反応は、私の予想を超えていました。『菜穂ちゃん、やばい。俺もハワイ好きなんだよ。俺たち気が合う!』って」

俄然盛り上がる彼にハイタッチまで強要され、菜穂はその勢いに押される形で仕方なく掌を差し出したのだった。

「『でもハワイとか、日本人のほとんどが好きですよね?』って、笑いを交えて小さく反論してみたんですけど、彼の耳には届いていなかったみたいで。結局、食事会の間ずっとそんな感じで、『俺と菜穂ちゃんは気が合う!』って何度も言ってましたね。…絶対、合ってないんですけどね(笑)」

四宮から完全にロックオンされてしまった菜穂は、食事会が終わる頃にはもうぐったりだった。

店を出たあと皆は二次会のカラオケに移動しようとしていたが、菜穂は一人帰宅することにしたという。

「でも、皆の輪を離れようとした私を、彼が大声で呼び止めたんです。恐る恐る振り返ると、案の定、彼はデートに誘ってきました。『今日は楽しかった!今度さ、二人でご飯行こうよ。俺さぁ、月末までパツパツなんだけど、来月になれば割と暇なんだよね。菜穂ちゃん、来月だといつなら空いてる?』って。なぜ、もう行く前提なの?って思いますよね」

“菜穂が断る”という選択肢は、彼の頭に浮かばなかったようだ。

「『ごめんなさい。今はまだ来月のスケジュールがわからなくて』って断り文句を言いました」

まだ先の予定である来月のスケジュールを問われ、1日たりとも候補日を出さない。さらに、こちらから連絡するとも言わない。

食事会中のやりとりで、四宮が空気の読めない男であることはわかっていた。しかし、ここまですれば、さすがの彼も察してくれるのでは、と考えたという。

「でも、それに対して彼は『そっか。じゃあまた、来月連絡する!』って笑顔で言ったんです」

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