聖女の仮面 Vol.5

「運命の再会を果たしたの…」夜10時。夫と子どもが待つ家には帰らず、妻が居た場所とは

女は、仮面を被った生き物だ。

優しい微笑みの裏に、怒りや悲しみ、ときに秘密を隠し、本当の自分を偽りながら暮らしていく。

たとえば聖女のような女にだって、裏があるかもしれない。

それを美しい仮面で覆い隠しながら、生きているのだ。


◆これまでのあらすじ

恵子が高校生の頃、聖陽女学院で、ある一人の女生徒が、理由もわからず突然転校していった。

あれから10年。27歳となった恵子たちの前に、美しく姿を変えて現れた絹香。恵子は彼女から、「自分を高校から追い出した犯人を捜している」と打ち明けられる。

その頃、萌が行方不明になったと連絡を受けて…?


「萌が、行方不明になっている」。

さくらから連絡を受けた恵子は、自宅からほど近い手嶋の家へと急いで向かっていた。

―まさか、萌は手嶋君の家に行ったんじゃ…?

時計はすでに22時を回り、萌が恵子の家を後にしてから、もう何時間も経っている。

萌は、近所で用事があるとはいっていたものの、手嶋の家に行っているとは限らない。

しかし、しきりに手嶋と絹香を引き離そうと話していた異常な様子からして、その可能性が高いのではないかと、恵子は思ったのだ。

恵子が十字路に差し掛かったちょうどそのとき、金切り声が夜道に響き渡った。

「もう、邪魔しないでっ!」

急いで恵子が駆けつけると、そこには息を荒げる萌と絹香、そして、二人の間で顔面蒼白になっている手嶋の姿があったのだった。

「ちょ、ちょっと萌、落ち着いて!」

今にも絹香につかみかかろうとしている萌を、恵子は急いで引き離そうとするが、その勢いは止まらない。

「恵子には関係ない!これは、私とこの女の問題なの!部外者は口出ししないで!

絹香、あんたはまた私の邪魔するのね。…許さないから!」

そう叫ぶと同時に、萌は手を大きく上げ、絹香に向かって振り下ろす。

「お、おい!やめろ!」

手嶋は、必死に絹香をかばおうとするが間に合わず、乾いた音と共に、絹香の頬は紅く染まった。

「萌っ、何するの!絹香大丈夫?」

恵子は、慌てて絹香の顔を覗き込む。だが、その表情を見てはっとした。

平手打ちされたことに対しての恐怖など、その瞳の奥には存在していなかったからだ。

ただ突き刺すような冷たい視線を萌に向けながら、絹香ははっきりと告げたのだ。

「萌、いいかげんにして。部外者は、あなたよ。」

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