マルサンの男 Vol.3

「毎日仕事に行くフリして、本当は何してた…?」男が部屋に持ち帰った物から、嘘に気づいた女

男も女も、誰だって恋愛しながら生きていく。

だから愛するカレには、必ず元カノがいる。

あなたの知らない誰かと過ごした濃密な時間が、かつて存在したかもしれないのだ。

南美と結婚間近の完璧なカレ・数也には、ある過去があった。

そして、ふとしたことをキッカケに、信頼していたカレの行動に疑念を抱き始める。

愛するカレは、どんな相手とどんな人生を歩んでいたのか――?

幸せ未来のため、相手の過去を知ることは、善か悪か。

あなたは、愛する相手の過去が、気になりますか?


29才の南美は、6才年上の恋人・数也がプロポーズを考えていると知り、幸せの絶頂にいた。

だが同時に、これまで意識していなかった彼の「2度の結婚歴」がどうにも気になっていく

しかも数也は出張予定のマレーシアで、その地に住む前妻・福原ほのかと密会する疑惑が芽生え…。

友達たちに背中を押され、南美は数也の出張に同行することになったが…。


鮮やかな陽光が、美しくそびえたつビル群に反射し、輝きを増している。

マレーシアの首都、クアラルンプール。

数也の出張に同行する、という前置きはあるものの、交際2年で5度目の海外旅行。福原ほのかのことはもちろん気になるが、南美は滞在1週間を存分に楽しもうと思った。

マンダリンオリエンタルにチェックイン後、すぐに向かったインフィニティプールに浮かびながら、南美は絶景を眺める。

「クアラルンプールって、こんなに都会なんだ」

「ああ。俺も驚いてる。想像以上だ」

数也は、南美を背後から抱きしめ、そう言った。

二人の眼前には緑地が広がり、その向こうには、競い合うように天へ突き抜けるビル群が見える。まるで、街の勢いを象徴するかのようだ。

視線を横にずらせば、クアラルンプールの象徴・ペトロナスツインタワーだ。

「ピークは過ぎたと言っても、まだまだ日本人の移住は増えてるらしいよ。この街にはビジネスチャンスがごろごろ転がってるってさ」

「…へえ。そうなんだ」

日本人の移住。それは福原ほのかにも当てはまる。数也の発言は前妻を念頭に置いたものなのだろうか。

「この後、スパを予約してあるから」

「えっ、ホント!?」

「その間、俺は商談に行くけど、南美ひとりでも大丈夫?」

「もちろん。お仕事がんばって」

福原ほのかに対する懸念も、数也の優しさの前には吹っ飛んでしまいそうになる。

―私って単純な女。

南美は心の中で笑った。

「じゃ、俺は先に支度するよ」

数也がプールから上がっていく音を聞きながら、南美はあらためて、晴れた空が広がるクアラルンプールを眺めた。

―この街のどこかに数也の前妻がいる。

気温の高まりと反比例するように、頭は冷静だった。

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