聖女の仮面 Vol.4

「彼、一度や二度じゃないの…」。女友達に、恋人の手癖の悪さを忠告しようとした既婚女

女は、仮面を被った生き物だ。

優しい微笑みの裏に、怒りや悲しみ、ときに秘密を隠し、本当の自分を偽りながら暮らしていく。

たとえば聖女のような女にだって、裏があるかもしれない。

それを美しい仮面で覆い隠しながら、生きているのだ。

恵子が高校生の頃、聖陽女学院で、ある一人の女生徒が、理由もわからず突然転校していった。

あれから10年。27歳となった恵子たちの前に、あの時いなくなった女が現れてー。

4人の女が美しい仮面の下に隠す、素顔と真実とは?

絹香からの連絡をきっかけに、10年ぶりの再会を果たした恵子達。

絶世の美女へと姿を変えていた絹香から、再会の真の目的を打ち明けられた恵子は、知らなかった過去の真実を探るため、早速行動に出るが…?


ー萌がうちに来るのなんて、何年ぶりだろう。

恵子は、急いで客間をチェックし、小さく頷く。

タイミングよく手に入った『銀座かずや』のお菓子は、お手伝いさんがキッチンで冷やしておいてくれているはず。インスタに夢中の萌のことだから、珍しいお菓子にきっと喜んでくれるだろう。

夜、萌がこの近くで用事があるらしく、今日は恵子の家を訪ねてくることになった。ここ数年は萌の家で集まることがほとんどだったので、なんだか変な感覚だ。

ー萌から、何か聞き出せるかしら。

先週、絹香に降りかかった過去の出来事を聞いて、恵子は大変驚いた。

突然の転校の理由が、友人2人にあるかもしれないということに、大きなショックを受けたのだ。

それに絹香は、転校する少し前に、友人2人と揉めたと言っていた。だけど、高校1年の出来事を何度思い出してみても、恵子にはまるで記憶がない。

自分だけが知らない出来事を、他の3人が共有していると思うと、仲間外れにされたような疎外感で胸が苦しくなる。

萌やさくらから情報を聞き出して、過去の真実を探ること。それは、絹香が持つ疑惑を明らかにするだけでなく、恵子自身の胸のもやもやを晴らすためでもあるのだった。



「そういえば、恵子と二人で会うのって珍しいよね。お家にお邪魔するのなんて、何年ぶりだろうね!」

目の前の和菓子の写真を取り終えた萌は、ようやく、スマホから恵子へ視線を移した。

「うん。前、萌だけ先に帰ったじゃない?あの時、絹香が手嶋くんの話をしたすぐ後だったし、元気がなさそうに見えたから気になっちゃって。」

手嶋。…絹香の婚約者で、萌の元恋人の名前。

それを聞いた萌の目が苦しげに歪むのに気付きながらも、恵子は話を続ける。

「だからね、甘いものを食べながらおしゃべりしたら、元気でるかなって思ったの。…余計なお世話だったら、ごめん。」

俯き加減の萌の目は、潤んでいるように見える。ズズッと鼻をすすったあと、しばらくしてから萌は口を開いた。

「私ね、絹香のことが…心配なの。」

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