夫の反乱 Vol.1

夫の反乱:「夫が、私の誘いを断るなんて…」。溺愛されていた美人妻が、結婚3年目で感じ取った異変

夫に感じた、突然の異変


「なんでだろう…」

二人に聞かれためぐみは、ドキッとした。これまで気にしてこなかったが、よくよく考えてみれば、最近の弘樹の行動を全く把握していないのだ。

海外出張なら、免税店や現地の限定商品など頼みたいものもあるが、国内出張ならお土産も期待出来ない。

半年前、国内ならいちいち行き先を報告しなくて良いと言って以来、弘樹も「出張」としか言わなくなった。

平日の夜もかなり遅いが、「飲み会」「会食」としか言わないし、土日も「ゴルフ」か「出かける」のどちらかだ。

誰とどこに行っているのか、何一つ知らない。

「弘樹さんがどうとかじゃなくてさ…。一般論として、その状況で浮気してても全然分からないじゃん?」

−弘樹が浮気…!?まさか。

千春の言葉に、めぐみの視界が一瞬グラリと歪む。

だが、彼女たちの言うことにも一理ある。“亭主元気で留守が良い”と、心の底から思っていたけれど、最近は、夫の不在に慣れ過ぎていたかもしれない。

「今日は家にいるらしいから、帰ったら出張のこと、聞いてみるわ」

その後もめぐみは、二人のハッピーオーラに付いていけず、かと言って愚痴をこぼすのも憚られたため、適当に愛想笑いしながら時が過ぎるのを待った。

ディナーを終えたのは20時半。普段ならもう一杯お茶でも行こうとなるところだが、「樹里も妊婦さんだし。早く帰りなよ」と、早々に切り上げて自宅へと急いだ。


「ただいま…」

めぐみがリビングに入ると、ソファで読書をしていた弘樹が「早かったね、おかえり」と振り向いた。

テーブルには、夕食に食べたと思しきハンバーガーの紙袋が置きっぱなしにされている。

「そ、そうなの。樹里が妊娠してるから、いつもより早く終わったの」

素知らぬ顔で答えながら、彼の様子を注意深く伺う。

スマホもテーブルに堂々と放置されており、何かを隠している様子はない。

弘樹は、「そうなんだ」と素っ気なく答えると、再び本に視線を戻した。

普段と変わらないように見えるが、どうしても先ほどの疑念が拭えないため、ちょっとした賭けに出てみることにする。

少し前までなら、めぐみが弘樹の隣に座ってもたれかかると、彼はすぐに「おいで」と肩を抱き、そのままイチャイチャし始める…というのがお決まりのパターンだった。

これまで、めぐみが断ることはあっても、弘樹から断られることなんて一度もなかった。

−ちょっと疲れているけれど仕方ない…。

色っぽいワンピースも着ていることだし、と気合いを入れてソファに近寄ると、予想外の出来事が起きた。

「俺、寝室で本読むわ。ここ使って良いよ」

そう言って、弘樹はさっさと寝室へと向かってしまったのだ。

−ま、まさか。クロなの…?

彼の背中を呆然と見つめながら、めぐみは夫の異変に初めて気づいたのだった。


▶︎Next:9月10日 火曜更新予定
夫・弘樹に感じた、異変。彼は、クロなのか…?それとも他に理由が…?

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。

この記事へのコメント

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No Name
こういう、何の自信があるのか知らないけど、旦那の愛情の上にあぐらをかく妻ってたびたび見かけるけどさ。
愛想つかされると、まず浮気疑うよね。
なんで、自分の態度が相手に影響を与えるって思えないのか、本当に不思議。
2019/09/03 05:3499+返信9件
No Name
私も以前、夫からの愛情に甘えて調子に乗りすぎて、夫が完全に機嫌を損ねてしまったことがありました。
しかも自分から文句を言ったりすることはなく、とにかく態度だけが変わっていって、そこから持ち直すまでにけっこう苦戦しました。
主人公は取り返しつかなくなる前に気づくといいですが。
2019/09/03 05:1099+返信16件
No Name
居なくなって大切さが分かるというパターンはダメです。かけがえのない人との時間も有限ですよ。私は死別したのでそれだけは伝えたいです。
2019/09/03 05:4199+返信1件
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