200億の女 Vol.9

「とろけるくらい、甘やかしてあげます」夫に不信感を持った妻に仕掛けられた、詐欺師からの甘い罠

「俺は、智が社長令嬢だということを隠している時に出会って、好きになった。女性があんまり得意じゃなかった俺が、必死で智を口説いたあの間抜けさを、智も覚えてるはずだ。デートだって緊張しちゃって、かっこ悪いとこばっかり見せた。だろ?」

過去を自虐し笑った大輝に、智も微かに笑みを返した。それに力づけられ、大輝は、膝の上に置かれていた智の手をギュッと握って、その目を見つめながら誓うように言った。

「浮気とかは、もちろん考えたことすらないよ。俺にとって、今この世で一番大切なのは、智と愛香だ。2人を失ったら生きていけない。大げさではなく、本当に生きていけなくなると思う」

ウソに混ぜた、心からの言葉。智の手を握る大輝の手に力がこもった。智の瞳が少し潤んでいるように見えて、大輝はたまらず抱き寄せた。

―ごめん。

心でつぶやいてから、大輝はその細い体を離し、もう一度向き合い、言った。

「智を安心させたい。この送り主を特定しよう。これって仕事用の携帯だよね?」

大輝の言葉に智が頷く。

「この携帯、少しの間預かっててもいいかな?この手の調査に強い人に調べてもらうよ。智と俺を名指しで書いてくるなんて、ただの嫌がらせだとしても手がこんでるし悪質だ。俺に任せてくれる?」

「…お願いしていい?」

智の言葉には、まだ力がない。それが辛くて、大輝は、じゃあ早速メールを入れてくる、と自室に戻る言い訳をし、携帯を持つと智に背を向けた。

大輝には、リビングに取り残された智がどんな表情で自分の背を見つめ…どんなことを考えていたのか、思う程の余裕はなかった。

栃木県の元採石場:兼六堂の新商品お披露目パーティー会場


東京から車で2時間半の場所にある、栃木県の元採石場。この洞窟をパーティー会場に作り変え、今夜大々的に、兼六堂の新商品お披露目パーティーが行われる。

親太郎は、悪友マサの愛車のマセラッティを運転しここまで来たが、東京から招待された選び抜かれたゲストは、兼六堂が貸し切った新幹線の車両で最寄駅まで到着し、そこから専用のリムジンで30分かけてこの会場に入るらしい。

パーティーの終わりが遅くなるため、全ゲスト分の部屋を高級旅館に手配済み。新幹線の中でも、シャンパンを提供し、ゲストにアペリティフを楽しんでもらう、というのだからこの商品にかける兼六堂の意気込みがわかる。その総責任者が、神崎智だ。

―とんでもないプレッシャーを…感じてるだろう。

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