女たちの選択 Vol.7

「田舎の開業医になんか、嫁ぐんじゃなかった…」東京を諦めきれない元・港区女子の後悔


「もちろん、生活という面では何の不自由もありません。また夫は口うるさいタイプでもなく、ハイブランドにも疎いから買い物も好き勝手にできますしね。でも…」

沙耶はそこで一度言葉を切る。そしてゆっくりと、地元の暇そうな主婦たちが集う、どうにも垢抜けない喫茶店を見渡した。

「いくら素敵なバッグを持っても、綺麗なお洋服を着ても、出かける先がこんな場所じゃぁ...」

そんな風に呟く沙耶が携えているのは、日本には数個しか入荷しなかったというデルヴォーの新作ミニバッグ。そして足元は、エルメスのオラン。

しかしこのバッグの価値をここにいる何人が理解しているだろう。このサンダルがエルメスのものだと、一体何人がわかってくれるだろう。

沙耶は再び、小さく諦めの息を吐く。

「開業医って休みがなくて、夫婦での旅行も全然行けないんです。今は子どもがいないから、義両親に睨まれない程度に一人で出かけたりもしていますが、子育てが始まったらそれも無理でしょうね」

代々続く開業医の妻が一番の勝ち組だ。そう言った母の言葉を否定する気はない。ある一面では、確かにその通りであるとも感じているからだ。

しかし沙耶は東京から遠く離れたここ高松で、一人寂しくSNSを眺めるたび、こう思わずにはいられないという。

−田舎になんか嫁ぐんじゃなかった。私だってここに来る前は、彼女たちなんかよりずっと、キラキラ輝いていたのに−


▶NEXT:9月8日 日曜更新予定
なぜ別れない…?モラハラ夫に耐え忍ぶ妻の言い分

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