「受験に失敗、この世の終わりかと思った…」挫折を克服するため2,000万払った、元・女医の闇

「そうこうしているうちに、あっという間に就職活動の時期になってしまって。医者以外の仕事を、自分の中では“仕事”と認めていなかったので全くやる気が起きませんでした。でも、外面を取り繕うことは得意なので、就職試験にはパスしたんです」

大学時代の成績が優秀だったのと、留学経験はないにも関わらず流暢に話す英語能力が買われて、外資系投資銀行に就職が決まった。

ところがハードな職場で3年ほど働いて体調を壊してしまう。

「休職中にカウンセリングを受け、やはり医者になれなかったことが大きな挫折となり、コンプレックスになっていることに改めて気づいたんです。そして医者になることでしかこれを解消することはできない、と27歳の時、医学部受験に再度チャレンジすることにしました。でも、トラウマで国立大学を受けることは出来ず、私立の医学部を受験することになりました。

そうなると、問題となってくるのが学費です。最低でも2,000万以上かかるため、それをどうやって工面するか色々考えました。

実家暮らしだったから蓄えはあったので、自分の貯金と、あと残りは親に頼みこんでなんとか借りることができました。人生最大の投資ですね」

もともと天才肌の彼女は、無事合格し医学部もトップ成績で卒業し、33歳でようやく小さい頃からの夢をかなえて医者になったとのこと。

「やっと手に入れたかったものを手に入れたのに、実際働いてみると、何かが違うって思い始めて…。これだけお金と労力をかけたのに、全く熱意が持てないんです。こういうのを燃え尽き症候群って言うんですかね…」

そして研修期間をなんとか終えたタイミングで、側にいた医学部時代の先輩と結婚することになり、結婚を機に医者をやめたという。

「結局コンプレックスを解消したかっただけかもしれないですね。2,000万もかけたのに、という感じですが、小さい頃からの“医者じゃなければ人じゃない”という呪縛から、やっと解放されました。でも親にお金だけは返さないと思ってるので、外銀時代に得た知識を活かして、今はネットトレーダーをしてます。対人ではない、こういう仕事の方が自分に向いているみたいで(笑)」

そう語る萌さんは、現在1歳になる息子がいる。医者になりたかったというコンプレックスに悩まされることも鬱状態になることもなくなったという。

「たとえ今医者でなくても医学部を卒業したことで、人生が好転しました。自分自身を、認めてあげることができたんです。自分の子供には、職業や学歴を押し付けるようなことは絶対にしないようにしたいと思います。それで人生を壊すことにもなりかねませんからね」

コンプレックスが解消され、人生の後悔が無くなるのであれば、金額の多寡は問題ではないのかもしれない。笑顔で語る萌さんを見ていると、そう感じた。


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