女たちの選択~その後の人生~ Vol.6

「無理やり離婚して欲しくない」29歳の自立した女性が、結婚せず“愛”に走る理由

彼こそが、運命の人だ。

その思いは、彼と関係を深めるにつれ強くなっていったという。同級生だった彼とも正式に別れ、友里恵は西畑との情事にのめり込んでいった。

「彼はもともと仕事人間で、田園調布に構えた自宅に帰らない日も多いんです。平日の夜はほとんど彼と過ごし、新しいオフィスにも頻繁に出入りしていました」

西畑の妻は彼の仕事に無関心であるらしく、オフィスを覗きにくるようなことは絶対にないということだった。

「西畑は私に、その辺の浮気男のような無責任な言葉を言ったりはしませんでした。妻と離婚するとか、そういうことは...一切。だけどその代わりに、彼は私にこう言ったんです。…妻と離婚はしない。けれど愛しているのは友里恵、君だけだ、って」

実際、西畑は友里恵に、できる限りの愛情を示してくれているという。

当時、彼女は芝浦のタワーマンションで暮らしていたが、まもなく西畑が用意してくれた広尾のマンションへと移り住んだ。

それから、およそ6年。

今でも西畑は、忙しい仕事の合間を縫って友里恵の元を頻繁に訪れているらしい。

また西畑がハワイに所有する別荘にも一緒に行くし、何より彼は、仕事に関する相談事もすべて友里恵にしているのだという。

「…確かに奥さんは、西畑の妻という立場を手にしています。でも、それだけ。愛されてない。だって現に、仕事をしている以外の時間のほとんどを、彼は私と共に過ごしていますから。形だけの妻。形だけの夫婦。…そんな女の人生、虚しいわ」

まっぴらとでも言うように、友里恵は手をひらひらと振る。

「私は形だけの妻のポジションなんて全然欲しくない。だから彼に、無理やり離婚して欲しいとも思わないの。家庭を脅かすような真似をする気もない。だって、結婚だけが女の幸せじゃない。愛する人に愛される方が、女としてよっぽど幸せだと思うわ」

20代前半から不倫の恋に溺れ、今年29歳となった友里恵。しかし当の彼女自身に、後悔も迷いも見当たらないのだった。

形だけの結婚を選ぶくらいなら、愛をとる。

世間から非難されることなど覚悟、周囲の理解を得られないことなど、彼女は百も承知なのだ。

何をもって“愛”と呼ぶか。

その解釈は人それぞれ、なのかもしれない。


▶NEXT:8月17日 土曜更新予定
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