32歳のシンデレラ Vol.2

知らぬ間にみんな既婚者…。30歳の同窓会で突きつけられる、独身“地方女子”の現実

「その10年が人生を決める」とも言われる、20代。

大半は自分の理想や夢を追い、自分の欲に素直になって、その10年を駆け抜けていく。

しかし中には事情を抱え、20代でそれは叶わず、30代を迎える者もいる。

この物語の主人公・藤沢千尋も、とある事情から、自分自身を後回しにした20代を過ごし、30歳を迎えたうちの一人。

思い描いていた夢は叶わず、20代を家族のために生きた千尋は、30代で自分自身の幸せをつかむ『シンデレラ』となることはできるのか―?


―私、こんなこと書いてたんだ……!

慌しかった日々が落ち着き、千尋はようやく母の遺品の整理に手を付け始めた。

押し入れの奥に眠っていたのは、外国製のおしゃれなアルミ缶。その中に、千尋の卒業文集やら、図工の作品がぎっしり詰まっていた。

そして見つけた、幼稚園のときに書いた七夕の願い事。

“かわいい およめさんに なりたい”

いびつなひらがなが並ぶ。その後ろに、きちんと、「花組 藤沢千尋」とこれまた歪んだひらがなで綴ってあった。その署名がなければ、自分が書いたものだとは信じられなかったかもしれない。

―いつから、素直になりたいもの・やりたいことを願うことができなくなっていたんだろう?

上京の夢は破れ、20代も終えてしまったけれど、それでも、まだ30歳。好きな人と出会って、一緒に暮らす―。そのくらいの夢はきっとまだ叶えられるはずだ。

「千尋、ちょっと休憩しないか」

1階にいる父が下から声をかけてきた。父は60歳を迎え、この春に単身赴任をしていた広島から戻ってきている。長年、母と2人きりで過ごしてきただけあって、まだぎこちなさもあった。

父は自分のせいで、娘に上京の夢を諦めさせたのだと思っているのかもしれないと千尋は推測していた。そのせいか、30歳前後の独身女性がよく言う、親からのプレッシャーというものを感じたことは一度もない。

「もうすぐ降りるね」

千尋は願い事を書いた色褪せた紙を抜き取り、自分のデスクにしまった。

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