“最高の女”と絶賛される美女が抱く、根深い鬱憤

「二人きりになったら、自分が壊れてしまう」とまで言わせてしまうからには、彼はとんでもないダメ男なのだろうか。

「いえ、広明は客観的に見てもいい男だと思います。頭もいいし、女性にも優しい。実際、すごくモテます。私は問い詰めたりしませんが、女の影に気づいたことも一度や二度ではありません。

もちろん平気じゃないですけど、ぶつかって喧嘩して言い合いをする方が嫌なんです。そもそも、単なる浮気だってわかっていますから」

しかし、二人の関係はどんどん歪なものになっていったと言うのだ。

「気がつけば私、召使のようになっていました。休みの日、彼は昼過ぎまで寝ています。その間、私は朝食の支度をしたり彼の部屋を掃除したり。疲れているから起こさないように気を使って。するとそのうちに寝室から呼びつけられ“水持って来て”って…。別にいいんですよ、水を取ってあげるくらい。大したことじゃありません。でも一事が万事その調子になってしまって」

茜があまりにいい女であるばかりに、彼のほうが全面的に彼女に甘えてしまうようになったのだ。

「友人たちからは、はっきり言えばいいじゃないって言われるんですけど、一つ一つは目くじらを立てるほどのことでもないと思ってて。そんなことで怒るのもなぁ…というレベルの。自分で気がついて欲しいなって思うけど、彼も別に偉そうにしているわけじゃない。悪気はないんです。それは私もわかっているので」

本当は自分で気がついて欲しい。

しかしまるで気づく様子のない広明に、茜は1,2度冷静に話をしたことがあるらしい。

「怒るとか責めるとかじゃなく、あくまでフラットに。決して嫌なわけではないけれど、あなたが疲れているときは私も疲れているし、あなたが私にワガママを聞いて欲しいように、私も聞いて欲しい時があるのよっていう話をしました」

しかし、彼の態度には何の変化も起きぬままに3年が経った。

「結婚したいって言われたとき、とても嬉しかった。そんな風に思ってもらえるのは心から光栄なんです。でもきっと広明は一生変わらない。今は一緒に暮らしてもいないし、友達や家族と過ごすことでバランスが取れています。でも結婚したらずっと一緒にいなくちゃいけないでしょう?そうなったら私…。結婚して自分が壊れてしまう前に、彼とは別れるしかないんです」

茜の目に、望まぬ未来が映ったのだろうか。どこか怯えたような表情で、彼女は小さく頭を振った。


▶NEXT:6月11日 火曜更新予定
「この彼と結婚はしない」と言いつつ...ダメ恋にハマるアラサー女

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