“最高の女”と絶賛される美女が抱く、根深い鬱憤

「私、どんな男性でも幸せにする自信があります」


「自分で言うのもアレですけれど…私と付き合う男性は幸せだと思います。私、新卒からずっと秘書をしているんですが…自分でも天職だと思ってます。誰かのサポートをするのが性に合ってるんです。相手が今何を求めているのか先回りして察知できるし、その日の気分や機嫌に合わせてあげることも容易い。理不尽を受け流すのだって苦じゃないんです」

たしかに茜は抜群にコミュニケーション力が高い。視線の合わせ方、話すスピードや声、相手との呼吸の合わせ方、さりげない気遣い…そのすべてが心地よく、彼女に嫌な感情を抱く人などこの世にいないだろうと思わせる。

しかしそれはあくまで“公の場”での話だ。彼氏・彼女の関係になれば、さすがに違う一面もあるのではないだろうか。

「いえ。よく驚かれるんですが、私、家族や彼氏に対してもこのままなんです。普通、女の人って仲が深まるとワガママになったり感情的になったりしがちみたいですね。そういうの、私には考えられない。もともと感情の起伏もほとんどなくて、こんな感じで常にフラットです」

そんな茜のことを、今の彼・広明も絶賛しているという。

「これまでの彼女は、意味のわからないことで怒ったり不機嫌になったりする子ばかりだったみたいで。茜は最高にいい女だって言ってくれていますね。私、料理も好きなので、週末は彼の家でリクエストに応えています。そういうのも嬉しいみたい」

聞いている限り確かに最高の彼女だ。そして何一つ問題が浮かび上がってこない。

それなのに一体なぜ、茜は広明との別れを考えているのか。

「無理してるわけじゃないんです、本当に。もともと私、自我の強いタイプではなくて、誰かに合わせている方が楽なんです。だから彼の好みや価値観に合わせることにストレスなど感じていませんでした。彼が喜んでくれることが心から嬉しいし、彼を喜ばせられる自分のことを誇りに思っていました。だけど…」

それまで笑みを絶やさなかった茜の瞳に、ふと陰が宿った。

「彼のバンコク駐在が決まって、一緒に来て欲しい、結婚しようって言われたとき…私の心が“無理!”って叫んだんです。嬉しかったんですよ、本当に嬉しかったんですけど...家族も友達もいない場所で彼と二人きりになったら、自分が壊れてしまう気がして」

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