女たちの選択~その後の人生~ Vol.2

「遠慮せずに外で恋愛していい」夫からの驚きの提案を、32歳の妻が受け入れた理由

「自分が“不幸”だとは、知らなかった」


「30歳の誕生日のことは、きっと一生忘れません。“たまには二人で美味いものでも食べよう”って主人に誘われたんです。そんなこと久しぶりだったので、何日も前から親に子どもたちの世話を頼んでたんですよ」

そうして連れて行かれたのは、南麻布のひっそりとした住宅街に出来たばかりという一軒家の中華レストランだった。

美しく繊細な料理に、ペアリングで出される様々な色をした酒。

数年前に独立し、個人事務所を構える夫は職業柄夜の付き合いも多く、すっかり食通になっていた。しかし今後は、自分も一緒にレストラン開拓の時間を設けるのもいいだろう。

真弓は慣れない酒で頰が赤く上気するのを感じながら、夢見心地で料理を堪能していた。

「そんな時でしたね、主人が神妙な面持ちで突然“話がある”と切り出したんです」


-今まで家のことをしっかりやってくれてありがとう。20代の楽しくて仕方がない時期を子育てに専念してくれたことを本当に感謝してる。

...そこで提案なんだが、僕たちもすっかりパパとママになってしまったし、これからはある程度自由を満喫してもらえたらいいと思ってるんだ。君はまだ若くて綺麗だし、機会があれば遠慮せずに恋愛したっていい。

いや、誤解しないでくれ。変な意味じゃない。ただ、君はこれまで人生を犠牲にしてきただろう。もう少し外の世界を楽しむ権利もあるだろう?-


「それはあくまで、私のための提案でした。“可哀想”な私のための。すぅっと目の前が暗くなるような感覚がありましたが、“どうかな?”とオドオドと私の反応を伺う夫の顔を見ると、すべてが馬鹿馬鹿しくなりました」

可愛い子どもと愛する夫。家族に囲まれた平和な専業主婦生活は間違いなく幸せだった。

なのに誰より身近な夫が、自分を憐れんでいた。彼は、“自分が真弓の人生の一番美味しい部分を奪ってしまった”と、本気で自責の念に駆られているのだ。

しかし真弓は、一つの矛盾に気づいたという。

夫が本気で妻を憐れむならば、本人が労わればいい。けれど、“外で...”などと言う時点で彼は匙を投げている、と。

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