女たちの選択~その後の人生~ Vol.2

「遠慮せずに外で恋愛していい」夫からの驚きの提案を、32歳の妻が受け入れた理由

幸せだった新婚生活


派手ではないものの小ぶりなパーツが整った真弓の幼げな顔立ちは、明らかに男好きしそうだ。また20代前半で出産を終えた彼女は腰つきもほっそりと、子持ちとは思えない軽やかさがある。

「妻の私が言うのも何ですが、主人は根っからの人気者気質というか...そう、“人たらし”の代名詞みたいな男なんです」

某音楽会社でプロデューサーをしていたという夫と真弓は、たまたま参加した食事会で出会ったそうだ。

「初めて会った時のことはよく覚えています。よく通る大きな声をしていて、豪快に笑う年上の男性でした。話が面白くて、大勢が集まる場で細かな気が利くのは今も変わっていませんね」

真弓は懐かしそうに目を細める。当時彼女は新卒でメガバンクに一般職で勤めていたが、二人は瞬く間に恋に落ち、すぐに寿退社を決めたという。

「仕事に未練なんてなかったです。好きな人と結婚して専業主婦になる以上の幸せなんてないと思ってましたし、それが普通だったので」

疑う余地のない幸福に包まれた彼女は年上の夫に溺愛され、すぐに子宝にも恵まれた。

「子育てはそれなりに大変でしたし、夫は職業柄、夜は遅いし休日出勤も多くて寂しい思いもしましたが、自分の人生は比較的順調だと信じていました」

早婚のデメリット


しかし勿論、早婚にもデメリットはある。

「でも、同期の女友達がボーナスと有休を使ってヨーロッパを周遊したり、可愛く着飾ってお誕生会なんかしているのを見ると何とも言えない気持ちになることもありました。私はイヤイヤ期の子どもたちを抱えて毎日ボロボロでしたから」

真弓は切なげに微笑む。

「やっとのことで子どもを寝かしつけたあと、生活感で溢れた部屋で何となくFacebookを開くと、キラキラした女友達が楽しそうな毎日を送ってるんです。流行りの店、お洒落な服、位置情報は六本木に銀座、丸の内。もうあの仲間には入れないんだと思うと孤独でした」

それでも、彼女は必要以上に悲観的になることはなかったそうだ。子どもたちの成長は間違いなく自分の生き甲斐であったし、家事も子育ても決して嫌いではなく、むしろ得意分野であったからだ。

「専業主婦は外の世界と接点がなくなるとか、社会性がなくなるって悩む女性も多いですよね。でも私は、少しくらい寂しくても、家をきちんと守っているという自分なりのプライドがありました。夫と私で役割分担して家庭を築いていると思えば、何を恥じることもありません」

家事や子育ては、母親にとって終わりのない自分との戦いのようなものだという。“手を抜く”ということをしなければ、ソファに腰を下ろすのは1日に数回、常に複数のタスクを抱え、子どもに振り回されながら送る日々。

有休も昼休みも年末年始もなく、5時間夜通しで眠れる日は週に1度あるかないか。出産から数年は、一人きりで出かけた回数は片手で数えられるほどだった。

「こんな風に話すと愚痴みたいに聞こえると思いますが、私は本当に幸せだったんです。でも...」

子どもたちが小学校に上がり、トイレも食事も何とか自分で済ませられるようになった。

やっと肩の荷が少し下り、これからは夫ともう少し夫婦らしい時間を過ごすのも良いかもしれない。手のかからなくなる子どもたちの成長にほんのりと寂しさを感じながらも、真弓は次のライフステージに心躍らせていた。

しかし、そんな彼女を打ちのめしたのは、夫の残酷すぎる一言だったのだ。

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