男運ナシ子 Vol.3

イケメン開業医の、まさかの裏の顔。デート直後、女が店の前で目撃した悪夢のような光景とは

欠点のない、完璧な男などこの世にはいない。人には誰でも長所と短所があるものだ。

しかし、女性が絶対に許せない短所を持った男たちがいる。

浮気性、モラハラ、ギャンブル、借金、ストーカー…

そんな残念男ばかり引き寄せる女が、もしかしたらあなたの周りにもいないだろうか。

橘梨子(たちばなりこ)、32歳もその一人。人は彼女を男運ナシ子と呼ぶ。

この話は、梨子がある出来事をきっかけに、最後の婚活に挑む物語。彼女は最後に幸せを掴むことが出来るのか、それとも…

久しぶりにお食事会に参加した梨子は、イケメン医師・智也と出会う。智也に惹かれ始めた梨子は、2人で食事に行く約束をしたのだった。


その日、朝から梨子は自分の手掛けるオーガニックブランドのパックをして、入念にメイクをした。クローゼットから新調した服を取り出し、鏡の前で笑顔を作る。

―今日は勝負の日。仕事でも、プライベートでも。

梨子のブランドが、二子玉川の百貨店に出店することになり、オープンの初日を迎えていた。そして夜は、お食事会で会った智也との初めてのデートの予定が入っている。

智也とは毎日LINEでやりとりをしているが、仕事を頑張る梨子にとっての何よりのご褒美になっていた。

気が付けば智也からのメッセージを心待ちにしていて、仕事の合間についつい携帯をチェックしてしまう。

こんなにそわそわとした気持ちは何年ぶりの感覚だろう。

今夜のデートのため、智也は、懇意にしている麻布のうなぎ屋さんを予約してくれたと言う。好きなものはあるかとLINEで尋ねられたとき、梨子がうなぎと答えたからだろう。

ハイブランドが集う百貨店の化粧品売り場で、異彩を放つパーフェクトオーガニックのカウンター。光沢のある黒と赤のコントラストが一際目をひき、壁一面に飾られた外国人モデルの巨大な写真は、シンプルかつクールなイメージで、他のブランドとは印象が異なる。

健康的で洗練された大人の女性をイメージし、梨子がこだわり抜いて考えたデザインだった。

「あの人がプロデューサーの梨子さんだよ」
「あー、この間雑誌で特集記事みた」

遠巻きに噂をしていたスタッフも、梨子が会釈をすると緊張した様子で整列した。

「梨子さん、今日はいつも以上にお綺麗ですね」

そう言ってくれたのは、百貨店のバイヤー・桃花だ。今回こうして無事に出店に至ったのは、彼女のおかげと言っても過言ではないくらいお世話になった。

「桃花ちゃんのアイシャドーもいい感じ。パーフェクトオーガニックの新作、使ってくれたのね」

梨子は桃花に向かってニッコリ微笑んだ。そして売り場の前で、ぎゅっと拳を握り締める。

―ついに百貨店での出店が実現したわ…。よし、今日も気合いを入れて頑張る…!

オープンと同時に、パーフェクトオーガニックには長蛇の列が出来ていた。梨子はお昼ご飯どころか休憩を取る暇もなく、関係者へのあいさつ回りやプレスの取材に追われ、メイクショーなどの仕事もこなした。

一息ついた頃、スタッフの一人が頬を紅潮させて駆け寄ってくる。

「今の売り上げ、このフロアで1位です!オーガニックで初めて店舗売上1位いくんじゃないですか!」

その言葉に、梨子は心から充実感でいっぱいになったのだった。

無事に閉店時刻を迎えると、スタッフ一人一人に労いの言葉をかけ、梨子はカバンをつかんだ。

「今日は梨子さんと一緒に飲めると思ったのに…」

残念そうな顔を見せるスタッフに「また別の機会で行きましょう」と声をかけると、そそくさとその場を後にする。

―いつもなら、仕事で成功したお祝いに、みんなで飲みに行ってただろうな。

でも、今は違う。なぜなら梨子には、もう一つの目標があるからだ。

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