姉妹格差 Vol.5

「どうして、何もかも奪うの?」恋心を抱いた上司と絶好のチャンス。そこに現れた“魔性の女”とは

「美人で優秀な姉と、できの悪い妹」

幼いときから、2人はこう言われてきた。

妹の若葉(わかば)と、姉の桜(さくら)は3歳差の姉妹。27歳と30歳になった今、その差は広がるばかりだ。

美貌、学歴、キャリア、金、男…全てを手に入れた姉と、無職で独身の妹。

人生に行き詰まった妹は、幸せを掴むことができるのかー?

エリート夫と結婚した姉の桜は、超美人な上に高学歴で、しかも弁護士。そんな姉に対し、妹・若葉は、劣等感に苦しめられていた。

若葉は2度目の司法試験に臨むも不合格。パラリーガルとして姉の事務所に就職し、イケメン上司・滝沢に恋心を抱くようになるが…


「若葉…別れたいって、どういうこと…?」

恋人の佳樹に戸惑った口ぶりで尋ねられ、私は彼の顔を直視できず、思わず目を逸らした。

—俺、アメリカに2年間の留学が決まったよ。

彼からそんな報告を受けた日から、すでに1週間が経っている。私は佳樹を呼び出し、何日も考え抜いてようやく行き着いた結論をついに告げたのだ。

佳樹は、ずっとハーバードへの研究留学を熱望していた。だから聞いた瞬間は、素直におめでとうと伝えた。

だけどー。

—2年の遠距離だ。成果が出れば、もっと早く帰れるかもしれないけど。

彼からそう告げられてからは、"もう一人の私"が心の中で囁いていた。

『佳樹とは、もう終わりにしないと』

佳樹は、勉強漬けだった私を支えてくれた、かけがえのない恋人だ。

「サークルの後輩で、駒場祭に来たあなたに一目ぼれした子がいる」。そう姉から紹介されたのが5年前。

サークルの男性陣みんなが姉のファンという中で、彼だけは「若葉がタイプ」と熱心に口説いてくれた。

だから彼にだけは、家族の悩みや劣等感を全て吐露することができたし、彼がいない人生なんて考えられなかった。

けれど私が夢を諦めてから、あれほどピタリと合っていた彼との波長が、少しずつ狂い始めてしまったのだ。

佳樹は博士課程に在籍していたが、研究チームに恵まれず、なかなかドクターがとれなかった。

「責任がとれないから、結婚はドクターとってから」

そう主張する彼は、いつ結婚できるか未知数だ。留学に2年、帰ってきて1年。少なくとも3年はかかるだろう。27歳の私には、それがなんとももどかしかった。

何より、それほどひたむきに努力する佳樹を見ていると、かつては自分も夢を抱いていたはずなのに、それを諦めてしまったことに対して引け目を感じずにいられない。

現に、会社での出来事を何気なく話す私に向かって、佳樹は時折こんな言葉を口にする。

「ねえ、若葉。本当に、弁護士になるの諦めちゃってよかったの…?」

それは私が、毎日のように自問自答していることだ。だけど正面から誰かにそれをぶつけられるのは、あまりに苦しかった。

そんなときに現れたのが、滝沢だったのだ。

【姉妹格差】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo