あの子が嫌い Vol.13

「まさか、クビ・・・?」"女帝"に仕え続けた3年間。彼女から言われた想定外のオファー

上京してからというもの、私の人生はパッとしない。

地元では「かわいいリカちゃん」と呼ばれ、散々もてはやされてきたけれど。

私程度の女なら、この街にくさるほど居るー。

地元を飛び出し、憧れの人気女性誌への入社を果たした秋吉りか子(29)は、自分の"無個性"にウンザリする日々を過ごしていた。

そんなある日、中途で採用された一人の女が、りか子の前に現れる。ムッチリとしたスタイルに、やたら身振り手振りの大きな帰国子女。

りか子が虎視眈々と狙っていたポジションを華麗にかっさらっていき、思わず嫌悪感を抱くがー。

まるで正反対の二人の女が育む、奇妙なオトナの友情物語。


人気女性誌「SPERARE(スペラーレ)」で編集長の秘書として働くりか子。はじめは嫌いだった“小阪アンナ”と、気づけば友情を築き始めていた。

りか子はweb編集の仕事をしたいと夢を抱くが、突然やってきたイケメン新メンバー・五十嵐に、中途半端に首を突っ込むな、と言われてしまい―。


ここ最近の私は、「年度末が近くて、仕事が立て込んでいる」と理由をつけ、アンナの手伝いを避けていた。

なぜならー。

入社初日の五十嵐から会議室に呼び出され、“編集者ごっこはやめろ”と、嫌悪感たっぷりの視線で見つめられたとき、私の背筋は凍った。

確かに資料を読み返してみれば、彼の指摘は正しい。かしこまった文章は、業務メールなら通用するかもしれないが、ファッション誌にはとてもじゃないが載せられるものではない。

その現実を突きつけられた時、悔しさと羞恥心におぼれてしまいそうだった。

アンナの仕事を手伝うことで、夢に近づいていると思っていたけれど、それは私の奢りに過ぎないのだ。

「そうよね。りか子に甘えてばかりじゃ、私も成長できないもの!」

アンナには、五十嵐との一件は伝えていなかった。しばらく仕事を手伝えない、とだけ告げた私に、アンナはほんの少し残念そうな顔を見せたが、ポジティブパワー全開で仕事に取り掛かっている。

そもそも、彼女は才能に溢れている。私が手を貸そうが貸すまいが、それが結果に大きく関わることなどないだろう。

オフィスでは、なるべく五十嵐に遭遇しないよう心がけていた。デスクを離れず自分の仕事に集中していれば、顔を会わせることはほとんどない。

そもそも年度末が差し迫ったこの状況では、雑念に苦しむ暇などなかった。

編集長のデスクにちらりと視線を向けると、そこにはいつにもましてピリついた女帝・高梨涼子の姿がある。スマホを片手にデスクの周りをウロウロと歩き回る彼女にも、五十嵐と同じ”苛立ち”のオーラが漂っていた。

—さすがに、今は話しかけられないわね。

明日の会議資料と、朝から手をつけられずに放置されたチャイラテを見つめながら、ため息をついたその時だった。

カツカツという耳慣れたヒールの音が、私のデスクの方へ近づいてくる。そしてその音がピタリと止まると、抑揚のない声で話しかけられたのだ。

「秋吉さん。仕事切り上げられそうだったら、少し付き合って頂戴。」

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