IT社長とセレブ婚目前だった女が、土壇場で婚約破棄した理由


「聡と出会ったのは3年前。とある有名人のバースデーパーティーでした。当時の私はまだネットショップも始めておらず、いわゆる港区女子で、音楽関係の会社で受付をして時々モデルやギャラ飲みのような方法でどうにか生計を立てていたんです」

そんな文乃にとって、聡との出会いはさながらプリティ・ウーマンだった。

文乃を一目で気に入ったという彼からの猛烈アプローチを受け、青山一丁目の彼のマンションでともに暮らすようになるまで、そう時間はかからなかった。

「10歳年上で、仕事でもそれなりの成功を収めた彼は、ちょうど結婚を考えるタイミングだったんだと思います。付き合って半年が経つ頃、旅先のニューカレドニアでプロポーズされました。

彼は名の知れたIT起業家で、見た目も爽やかな上にファッションにも生き方にもセンスがあって、そういうところも好きだったんです。そんな彼に、2カラットを超えるハリーウィンストンのダイヤを差しだされ、その先には豊かで華やかな生活が約束されていました」

周りの友人からは羨望の眼差しを浴びたし、実際、文乃は幸せだった。

しかし彼女は、土壇場で全てを捨てたのだ。

「思い返せば、最初からちょっと異常ではあったんです」

そう言うと文乃は、出会ったばかりの頃の、あるエピソードを教えてくれた。

「2回目のデートの時だったかな。真夏の暑い日で、ベアトップのマキシワンピースを着て会いに行ったんです。そしたら…会った途端に、説教されちゃって。そういう“はしたない”格好はやめて欲しいって、真顔で言われたんです。

はしたないって…。ただのベアトップですよ。そのマキシワンピも青山のセレクトショップで買ったもので大人っぽい、上品なデザインだったし。だけど彼、完全に機嫌を損ねちゃって、その日の買い物デートは中止。彼の家で映画を見ることになりました」

聡は、文乃が外で肌を露出するのを極端に嫌がったと言う。

「ベアトップ、オフショルなんてもってのほか。ちょっと深いVネックのニットを着ようとしたら、インナーキャミを着ないと外には出さないって言われたんですよ。

今から思えば、何言ってんだこの男って感じなんですけど(笑)。最初は素直に従ってましたし、ちょっと嬉しかったりもしたんです。他の男の視線に晒されたくないって…そんな風に思ってもらえるのは、女として光栄なことだから。少しばかり異常な束縛も、愛されているがゆえって、そんな風に自分を納得させていました」

だがそんな文乃が、ついに恐怖を感じる事件が起きた。

「家の近くのカフェでブランチをしていた時のことです。彼がお手洗いに立って席を外したタイミングで、スタッフの男の子に声をかけられて談笑していたんです。と言っても、変な下心とかじゃないですよ。私が常連だから、声をかけてくれただけのことで」

聡が席に戻ってきたタイミングで、スタッフの男の子は「では、また」と笑顔で去っていった。

その、次の瞬間。聡を振り返った文乃は、彼に突然の暴言を吐かれたのだ。

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