2019.02.21
SPECIAL TALK Vol.53留学、永住権取得。そしてアメリカの公務員に
金丸:海外で、学びたい先生のもとで学べたとは、最高の留学ですね。
中林:そうですね。ただ、大学院で勉強している間に、「これは机上の空論かもしれない」と思い始めたんです。現場の政策決定過程がどうなっているのかをちゃんと自分の目で確かめたい、と。
金丸:「自分の目で確かめたい」というのが中林さんの行動原理なんですね。
中林:そうじゃないと信用できないですから。そこで、まずはインターンに行くことにしました。そのとき法律事務所を選んだことで、大きな転機がありまして。そこにいた弁護士さんが「日本人が永住権をもらえるプログラムができたんだよ」とおっしゃって、「まあ、応募してみるか」くらいの軽い気持ちでいたら、先着順でもらえてしまったんです。
金丸:先着順だったんですか!?
中林:そうなんですよ。国務省が管轄するAA-1プログラムというもので、その後は抽選になったりもしましたが。
金丸:じゃあ、中林さんはラッキーだったんですね。
中林:永住権をもらえたことで、人生がガラッと変わりました。
金丸:そして、いよいよ議会の予算委員会に就職される。
中林:就職活動は50ヵ所くらい回りました。ワシントンでは民間もいろいろなかたちで政策にかかわっています。だから、弁護士事務所やロビー活動をしている団体なども検討しました。国務省ではリチャード・アーミテージ氏にもお会いしました。
金丸:米共和党の重鎮ですね。ところで、日本に帰ってくることは考えなかったのですか?
中林:そのときは考えませんでした。知り合いからCNNにも誘われ、その場合は日本で働く可能性もあったのですが、やはりアメリカの現場を、自分の目で見たいと思っていたので。
金丸:その現場のひとつが上院の予算委員会だったのですね。予算委員会には何年いらっしゃったのですか?
中林:大学院を卒業して、永住権を獲得したのが1992年、日本に帰国したのが2002年ですから、10年間です。
金丸:かなりの長期間ですね。
中林:本当はもっといたかったんですよ。なにせ予算を扱っているので、身の回りでは陰謀が渦巻いていて、とても刺激的でした(笑)。誰がどんなことを考えていて、それがどのように政策になり、予算がつくのか。そのダイナミズムを本で学ぶのではなく、身をもって経験するというのは、本当に貴重な体験でした。アジアの金融危機があったときなど、日本に関する公聴会を開くときは全面的に任されて、質問を用意したり、証言してくださる方をアサインしたりと、毎日面白くてしょうがなかったですね。
金丸:その間、ずっと国籍は日本のままですよね。
中林:はい。当時のアメリカはおおらかだったから、「早くアメリカ国籍を取れ」というようなプレッシャーを受けることもありませんでした。
金丸:「もう米国籍を取っているんだろう」と周りが勘違いしていたのかもしれませんね。だって、アメリカが好きで、こんなに一生懸命仕事をしているんだから。
中林:そうかもしれません。ただ、アメリカは二重国籍が認められているのですが、日本では認められていない。つまり、米国籍を取ったら、日本国籍は捨てなければいけないのです。
金丸:その選択肢はなかったのですか?
中林:なかったですね。私はアメリカで経験を積んで、そこで得たことをいつか日本に持ち帰ろうと思っていましたから。でも、ちょっとだけ悩んだことはあります。
金丸:というと?
中林:国防総省で安全保障の仕事をしないかと誘われたんです。「ぜひ来てほしい」と言われたけど、そのときにネックになったのが国籍。予算委員会は立法府ですが、国防総省は行政府。しかも扱う情報は極秘中の極秘です。だから米国籍が必要で。
金丸:なるほど。それは悩ましい。
中林:「もし国防総省に行けば、アメリカ側の先頭に立って、日本側と交渉することもあるだろう。そうすると歴史に名が残るんじゃないか」なんて考えたり。
金丸:ちょっとした名誉欲が。
中林:「きっと日本が大騒ぎするな」とか、ムクムクと妄想も湧いてきて(笑)。でもやっぱり日本国籍のほうが大事だと思って諦めました。
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