噂の女 Vol.2

「口説けなかった女はいない」と豪語する男が連絡先すら教えてもらえない、謎の美女とは

東京にいる一部のアッパー層の間で、最近、密かに“噂”になっている女がいる。

彼女の名は、春瀬紗季―。

一聞すると爽やかで可愛らしい女性を想像するが、彼女の“噂”はそれを鮮やかに裏切る。

大抵の者は「悪魔のような女だ」と言うが、ごく一部の間では「まるで聖女のようだ」と熱狂的に支持されているのだ。

その正体は掴みどころがなく、彼女の噂は常に絶えない。

そんな噂の女にあるパーティーで出会った宮永爽太郎(29)は、彼女に近づき、何とかある情報を得ようと画策する。

これまで「口説けなかった女はいない」と豪語する爽太郎だったが、彼の運命は彼女と出会ったことで、思わぬ方向へと転がっていく…


「はぁ…。今日も収穫なしか…」

僕はそうため息をつくと、PCを閉じ、カップの底に少しだけ残る冷めきったコーヒーを飲み干した。

『ザ・カフェ by アマン』に、僕が口説こうとしている春瀬紗季がよく訪れると聞いて、やってきたのだ。

尤も、僕が彼女に近づきたい理由は、色恋と言った艶っぽい話ではない。

ある情報を得るためだ。

僕は来年の都知事選に出馬予定の、桐生浩太という男性議員の公設秘書をしている。彼女はその対立候補…黒田源という男の愛人だと噂されているのだ。

もし本当に愛人なのだとしたら、持っている情報次第では、黒田源を窮地に追い込むことも可能だ。だから僕は紗季を口説き落とし、心を開いた彼女から情報を盗み出そうと考えていたのだ。

先日行われたパーティーで彼女と初めて会い、少しは自分を印象付けられたと思ったのだが…。

あの日、名刺を渡したあと紗季のことを知ろうと話題をふった矢先、彼女の友人だと言う人物が現れ、結局それきりになってしまった。

あれ以来、会うことは愚か連絡さえ取っていない。そもそも、彼女の連絡先すら知らないのだ。

前回はたまたまパーティーに出席するという情報を得られたのだが、それ以外の情報はない。

だからこうして、多忙な仕事の合間を縫って、彼女が現れそうな所を順に訪れているのだが、未だ空振りに終わっていた。

その時、ブーブーッと机の上に置いてあったスマホが振動し、画面にメッセージが浮かび上がった。

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