マザー・ウォーズ~妻たちの階級闘争~ Vol.5

週刊誌のカメラマンに狙われた、政界プリンス妻の疑惑。怪しい視線の先にいた、男の正体とは

あなたが港区界隈に住んでいるならば、きっと目にしたことがあるだろう。

透き通るような肌、絶妙にまとめられた巻き髪。エレガントな紺ワンピースに、華奢なハイヒール。

そんな装いの女たちが、まるで聖母のように微笑んで、幼稚園児の手を引く姿を。

これは特権階級が集う秘められた世界、「港区私立名門幼稚園」を舞台にした、女たちの闘いの物語である。


麻布十番在住の菱木悠理は、作家の夫・邦彦のたっての願いで、仕事を辞めて娘の理子を名門幼稚園に入れることになった。

初回ママランチは会員制の東京アメリカンクラブで催され、役員を引き受けるよう仕向けられた悠理。初仕事の運動会では、衝撃の光景が繰り広げられ、改めて場違いぶりを痛感する。

そして次の大イベント「フェスティバル」の準備で、高輪妻の痛烈な嫌味を受け、喧嘩をしてしまった悠理だが―。


「邦彦君!今日という今日は言わせてもらうけど、私がこんなに苦労するってわかっててあの幼稚園に理子を入れたの!?」

悠理は、娘の理子を幼稚園に送ったあと、十番の『イート・モア・グリーンズ』に、締切明けの夫・邦彦を仕事場から呼び出した。横並びのテラス席に着くなり夫に詰め寄る。

「何なの?意地悪?さては新作のネタ作り?」

「ええ~?そんな…心外だよ悠理さん。落ち着いて。ほら、グリーンスムージーでもどう?」

「いるかっ!いや、いるけど!」

おそらく徹夜明けで一睡もしていないであろう邦彦は、臨戦態勢の悠理に久方ぶりの安眠を邪魔されても怒ることなく、ニコニコしながら座っている。

「そういうコンサバ紺ワンピースも、すっかり似合ってるね。とってもエレガントだ」

「そりゃ3か月、平日は毎日毎日、紺ワンピ来てれば馴染んでもきます!ねえ、邦彦君が通ってた頃からこの幼稚園ってこんな雰囲気だったの?亡くなったお義母さまだって、相当苦労されたんじゃない?」

邦彦は無精ひげをなでながらテラス席で青い空を仰ぎ、運ばれてきたコーヒーを美味しそうにすすった。

「まあ、正直子どもの僕は楽しいばかりで、母がそこまで苦労してたかは…。そうか、悠理さんには申し訳ないことをしたね」

「申し訳ないじゃすまないのよ~!」

昨日の幼稚園での失態を思い出して、がっくりと肩を落とす悠理を見て、邦彦はよしよしとばかりに肩を抱く。

「でもね、悠理さん。物事の上面だけに気を取られないで。彼女たちをよく見てみてよ。きっと面白いことが起こるから」

邦彦はそう言って、意味深に微笑んだ。

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