恋と友情のあいだで 〜里奈 Ver.〜 Vol.7

エリート商社マンの妻の座を勝ち取った“Bランク女”の変貌。31歳の花嫁が犯した唯一のミス

―あの頃の二人を、君はまだ覚えてる...?

誰もが羨む生活、裕福な恋人。不満なんて何もない。

でもー。

幸せに生きてるはずなのに、私の心の奥には、青春時代を共に過ごした同級生・廉が常に眠っていた。

人ごみに流され、都会に染まりながらも、力強く、そして少し不器用に人生を歩む美貌の女・里奈。

運命の悪戯が、二人の人生を交差させる。これは、女サイドを描いたストーリー。

派手な女子大生生活の後、総合商社での理不尽な社会人生活に疲弊した里奈は、7つ年上の直哉との結婚したが、夫との愛情格差不満を抱いている

そんな中、新婚の廉と偶然の再会を果たすことになった。


「ごめん、里奈。待った?」

広尾の『Sudachi』にやってきた廉は、暑そうに首筋の汗を拭った。

私が退職して以来、久しぶりに再会した廉は、南国の商社マンらしく少し日に焼けていた。

そして、その横顔と胴体には、若い頃には見当たらなかった脂肪が薄っすらと存在感を帯び始めている。にも関わらず、「モテそうだな」なんて反射的に思ってしまった自分に驚いた。

しかし私の知っている廉は、広尾のオシャレな和食をサクッと予約できるほど手際のいい男ではなかったのだ。

28歳になった彼は大人の貫禄を身に付け、“男”として悔しいほど成長を遂げていた。

「ううん、今来たところ」

けれども私は、そんな感情は微塵も態度には出さずに廉との時間を過ごした。


結論から言うと、私たちはこの日、特に深い会話をしたり、何かアクションを起こすわけでもなく、ワザとらしいほど爽やかに食事をしただけだ。

近況を平穏に報告し合い、むしろ不自然なくらい、お互いに触れたいはずの核心を避けながら行儀よく振る舞っていたと思う。

廉が帰り際に発した、このたった一言を除けば。


「あのさ、里奈...。結婚生活、幸せなのか?」


心の中を見抜かれたことへの焦りの中に、ほんの少しの安堵があった気がする。

「当たり前でしょ」と平然と答えたものの、廉はこうして私の胸に小さな引っ掻き傷のような爪痕を残した。

そしてこれが、二人の関係をいよいよ複雑に縺れさせてゆくきっかけの一つになったのだ。

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