ふぞろいな駐妻たち Vol.6

異国の地で“禁断の罠”にハマった駐在員の悲劇。夫の女遊びに気が付かないフリをするのが、妻の幸せ?

駐妻【ちゅうづま】―海外駐在員の妻。

数多の平凡な妻の中で、一際輝くステータス。それは期間限定のシンデレラタイム。 そして普通の女に与えられた「劇薬」。

共通点はただ一つ、夫について、海外で暮らしていること。

駐妻ワールド。そこは華麗なる世界か、堅牢なる牢獄か。


夫・彬の赴任に伴い、タイ・バンコクに来た里香子。タイ語教室ではマダムたちのマウンティングランチに意気消沈しかけるも、バンコクで働く友人ケイと、同じく駐妻の雪乃に励まされ、なんとか気を取り直す。

しかし会社の奥様会でも違和感を覚え、彬の心ない一言が追い打ちをかけるが、平穏を保ちたい一心で黙殺するのだった。

一方、雪乃は、夫・仁志が隠し口座から多額の現金を引き出していることを知り、愕然とする。そこに「女連れで空港にいた」とケイからの目撃情報が入り―。


「これが仁志さんが連れてた女の素性。仁志さん、アソークの有名なゴーゴーバーに入り浸ってる。特定の女っていうより、何人かのお気に入りのゴーゴー嬢がいて、代わる代わるペイバーしてるみたいね」

ケイが、淡々と報告書を雪乃に渡した。

「ゴーゴーバー?ペイバーって?」

ケイの緊急招集LINEを受けてカフェに来た里香子は、無言で報告書を読む雪乃を横目に、ケイにひそひそと尋ねる。

雪乃の夫が女連れで目撃されたのは、1週間前のことだ。なんと、その女というのはタイ人女性であった。

「半裸の女の子がいっぱいいてね、お酒飲んで、気に入ったらペイバー、つまり連れ出せるお店」

「なるほど…」

里香子は一言断ってから、雪乃が放り出した報告書に目を通す。

「ケイ、よくこの短時間で調査の手配できたね。仕事関係でツテがあるとか?」

里香子が何枚かの「証拠」写真を手にして驚いていると、ケイはこともなげに言った。

「ううん、彼に頼んで、日本人駐在員浮気調査に強い事務所あたってもらったのよ」

「彼!?ケイ、そんな人いたの?」

「そう。年下のタイ人。うちの編集部のドライバー。今はその話はいいから、雪乃のこと考えよう」

ータイ人!?年下?ドライバー?

里香子の頭に、ケイの歴代の頭脳派エリート年上彼氏が頭をよぎる。どういった心境の変化なのかを訊きたかったが、今は恋バナをしてる場合ではない。

ぐっと質問を飲み込んで、紙のように白い顔の雪乃のほうを見る。雪乃はやけっぱちな調子でつぶやいた。

「こんなもの、いらないよ。もう本人に聞いちゃったの、昨日。我慢できなくて」

【ふぞろいな駐妻たち】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo