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  • ネブミ男 Vol.9

    ネブミ男 特別番外編:アヒル口女は本当にモテるのか?「ぶりっ子、上等」を謳う女の誤算

    「龍平さんの、好きなお料理ってなんですか?私フードコーディネーターなので、龍平さんの好きな料理、今度作ってあげたいなぁ♡」

    「へぇ、歩ちゃんはフードコーディネーターなんだ...作ってもらえるのなら、何でも嬉しいよ」

    男とは、なんて単純な生き物なのだろうか。

    昔から“男を手に入れたいなら胃袋を掴め”なんて言うが、34歳の独身男にとって、やはり料理ができぬ女性よりも、料理上手な女性の方が魅力的である。

    しかも歩の場合、所謂世間一般の“自称・料理上手な女”よりも、フードコーディネーターという職業に就いている分、説得力がある。


    そして何と言っても龍平は、一人暮らし歴10年以上。暖かい家庭料理を欲するお年頃である。

    「そしたら、定番だけどハンバーグとかどうですか?私の得意料理なんです♡」

    口をぷくっと膨らませて、所謂“アヒル口”でこちらを見てくる歩に、龍平は何とも言えない気持ちになる。

    「歩ちゃんってモテるよね?なんか男心のツボを心得てる感じがするし」

    さっきから歩は、上目づかいでこちらを見てくるだけでなく、色々と気がきく女性だった。

    距離感も、付かず離れずの一定距離を保っており、その距離の測り方が絶妙だ。またベタベタとtoo muchなボディータッチはしていないのに、適度なお触りもあり、そのさじ加減が抜群に上手い。

    —バチェラーで、最後の4人まで残っただけのことはあるな...

    しかし、龍平がそんな風にうっかり歩に転がされかけている時だった。

    歩は、あの“禁断の話”を持ち出したのだ。

    「龍平さんは、彼女とはいつ別れたんですかぁ?」

    お皿に料理を取り分けながら、再び歩が上目づかいで話しかけてくる。

    「最後...いつだっけな。忘れちゃったよ。歩ちゃんは?」

    本当は正確に覚えているが、歩に言うことではないと思い龍平は言葉を濁す。しかし、その時だった。


    「私、すご〜く好きな彼がいたんです。6年も付き合っていたんですが、結局別れちゃって。未だにその彼のこと思い出すんですよね」


    「へ、へぇそうなんだ」

    この子は、計算でこれを言ったのか。それとも、ただ純粋なのだろうか。

    歩の中で、その彼の存在はとても大きかったのだろう。20代で6年間交際していたことは一途で素晴らしいかもしれないが、その話を聞かされたところで、どう反応すれば良いのか分からない。

    且つ、実際にそんなことを言われると、交際したいと望む男には重圧である。

    新しい男からすると、昔の男を引きずっている女性にアプローチするのは無駄足かも?と思うってしまうものだ。

    「元彼の話は、あまりしない方がいいんじゃない?」

    「え〜でもぉ。ありのままの私を知って欲しいし、嘘は嫌なんですぅ」

    素直なことは良いことである。

    しかし決して男は“赤裸々告白”を望んでいない。具体的な詳細を聞きたいわけでもない。

    想像力を駆使し、言葉を濁す。もしくはざっくり話すくらいで十分なのだ。

    「恋愛って、難しいんですね♡」

    そんなことを言いながら、歩はまたアヒル口になっていた。

    しかし、これだけではなかった。彼女には結婚できない最大の欠点があったのだ。

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