2018.04.21
十人十色の麻布十番 Vol.1元港区女子に子犬をプレゼントした夫の思惑
麻布十番在住で専業主婦の桃子の1日は、まずは近所のヨガ教室から始まるという。
「ヨガくらい行かないと、さすがに暇すぎるんです。何か用事がないと、お昼まで寝ちゃうし」
クスっと舌を出して微笑むその仕草は、とても35歳とは思えない。
ほぼ毎日ヨガ教室に通っているおかげか、身体つきもほっそりとしなやかで、表情にも少女のような可憐さがあった。
そんな桃子の膝の上で「クンクン」と彼女を見上げる小さなトイプードルとセットになると、港区民...いや、麻布十番妻の余裕と平和を見せつけられたような気分になる。
「え?この子?そう、よくパピーちゃんと間違えられるんです。ナナは“ティーカップ”だから小さいけど、もう5歳ですよ」
真っ黒な大きな目に、綿菓子のように真っ白でふわふわの毛並み。まるでぬいぐるみのような姿を見れば、この犬がどれだけ高価であるかは容易に想像がつく。
思い切って値段を聞いてみると、「うーん...」と少し躊躇いながらも、「たぶん、100万ちょっとくらい」と小声で教えてくれた。
「今となっては、もうナナなしでは生きていけませんけど...。実はこの子は、夫が勝手に買ってきたんです。ホラ、そこの商店街にある“P‘s-first”で」
麻布十番の“P’s-first”と言えば、とにかく顔の可愛い小型犬の子犬が集まるペットショップとして有名らしい。もちろん値段も普通のペットショップとは桁違いだろう。
「5年前、六本木から麻布十番に引っ越したときに、夫が突然プレゼントってナナを連れてきたんです。うち、子どもがいないから、犬でもいないと私の独身気分が抜けないと思ったみたいですよ」
突然子犬を連れて帰ってきたという桃子の夫。
そこには、“港区の夫婦”らしい事情があった。
「私、結婚当時は28歳だったから。友だちは独身の子が多かったし、結構夜も出歩いていたんです」
桃子は何でもないことのように淡々と語るが、そこには“元港区女子”と思しき気配が垣間見える。
結婚当初は六本木に住んでおり、当時32歳だった桃子の夫は外資系コンサルティングファーム勤めで多忙な日々を過ごしていたから、彼女は独身と変わらない自由気ままで少々派手な生活を送っていたようだ。
そんな桃子の奔放さを見兼ねた夫は、六本木よりも少し落ち着いた下町情緒のある麻布十番に住まいを移し、妻に子犬をあてがったという。
「別に浮気とかしてたわけじゃなかったんですけどね。十番は何だかんだ便利だし、美味しいお店もあるから今は気に入っています」
そう言う桃子は、今となっては麻布十番以外の街に赴くことは殆どないという。ヨガも買い物も外食も、全てこの街で完結してしまうのだ。
一番好きな店は予約困難で有名な『エクアトゥール』だが、桃子は夫と店を訪れるたびに次の予約を入れるため、3、4ヶ月に1度は定期的に通っているという。
そして、事あるごとに「ヒマ」と連発する桃子だが、実は単なる専業主婦ではなかった。
昔からファッションが大好きだった彼女は、“イメージコンサルタント”なる資格を有しており、多くのクライアントを抱える“コンサルタント”なのだ。
それは主に女性の骨格や肌の色味等に基づいて、それぞれに似合うファッションをアドバイスするという仕事だというが、センスも人当たりも良い桃子の評判は、個人のクライアントだけに留まらなかった。
「最初は趣味程度に、主婦友のお買い物に同行してあげるくらいだったんですけど。気づいたら色々とお仕事頼まれるようになってて」
今では有名ファッション誌のコーディネート企画や、大手アパレルブランドのアドバイザリーなど、桃子の仕事は多岐に渡る。
この記事で紹介したお店
エクアトゥール
豆柴然りですけど。地道にスタンダードを追求して健全な犬を後世に引...続きを見るき継いで行こうとしているブリーダーもいれば、「生まれたものを何でもいいから高く売ろう」という浅ましい人間も多い業界です。
何よりティーカップが売れることで、虚弱同士でもいいからかけてもっと小さい犬を作ろうという動きも出ています。犬が可哀想です。
【十人十色の麻布十番】の記事一覧
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