パーフェクト・カップル Vol.12

クビを宣告されて私生活の切り売りを始めた、人気アナウンサーの“誤算の始まり”

誰もがインターネットやSNSで監視され、さらされてしまうこの時代。

特に有名人たちは、憧れの眼差しで注目される代わりに、些細な失敗でバッシングされ、その立場をほんの一瞬で失うこともある。

世間から「パーフェクトカップル」と呼ばれる隼人と怜子は、一挙一動が話題になり、「理想の夫婦」ランキングの常連として幸せに暮らしていた。しかし結婚6年目、人気アナウンサーの夫・隼人が女の子と週刊誌に撮られてしまう

謹慎処分を受けた夫・隼人だったが、彼を陥れたのは、2人の悪意の偶然の連鎖の結果だった。そこに芸能界に絶大な力を持つ香川の思惑が加わり夫婦のピンチは続く中、怜子はテレビ局にやってくるが、その目的は…。

「世間の目」に囚われ、「理想の夫婦」を演じ続ける「偽りのパーフェクトカップル」の行く末とは?


「怜子さん、堀河がこの先もし本当に浮気したとしても、何とか許してやってくださいね。」

私の対面に座ったテレビ局のブロデューサーが、至極軽い口調で笑いながら言った。私は一瞬何を言われたのか分からず、返事もできず、隣に座る隼人の顔を覗き込んで助けを求めた。

「やめてくださいよ、妻がびっくりしてるじゃないですか。そんな感じだからテレビ業界の人は、軽薄だとか適当だとか言われちゃうんですよ。」

隼人は茶化しながらも、割と真剣な口調で咎める。

でもプロデューサーは、ガハハと豪快に笑い、ごめん、ごめん、と言いながらもたいして悪びれもせずに続けた。

「だって、好感度で視聴率を稼いでる堀河アナが離婚、なんてことになったら、うちの局には大打撃なんだから。日本中の奥様方を敵に回すのだけは避けてくれよ。」

「怜子、気にしなくていいからな。」

隼人が私の方を向いて言うと、プロデューサーがまた、ガハハと笑った。

―耳障りな笑い方。

ここはテレビ局の31階。

私たち夫婦は、隼人と笹崎アナが交代で司会を務めるという新番組で、夫婦で初共演することになり、今日はその打ち合わせに来ている。

番組のプロデューサーとディレクター、隼人と私、そして私の事務所の社長の5人が会議室で顔を合わせていた。

私が夫婦共演を決めたのには、ある目的があった。

―だから、演じきってみせる。

私は、何がおかしいのかまた笑い始めたプロデューサーの名前を呼んで、言った。

「私たちが離婚することは絶対にありませんから。堀河隼人のことを、どうぞ末永く、宜しくお願いします。」



隼人が私に番組への出演依頼をしてきたのは3日前、自宅で。

彼はまず、番組内容の説明を始めた。

「今までテレビに出たことのない著名人を口説いて『テレビ初出演』してもらうってことを売りにした番組なんだ。日曜の昼の1時間番組なんだけど、初回はノーベル文学賞受賞作家で俺の担当。2回目は野球選手で笹崎の担当。」

取材VTRとスタジオでのトーク構成で、俺たち司会者が取材も担当する、と言った後、続けた。

「日曜の昼放送だから、元々ファミリー層がターゲットなんだけど、3回目は『奥様層』を狙って『カリスマ・ママモデルのホリレイ』に是非出てもらいたい、ってことになってさ。『ホリレイ』もテレビ初出演だろ?」

で、俺が家庭内キャスティングを頼まれてさ、と隼人は茶化しながら言ったが…。

「…私は出ない。絶対に出たくない。」

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