これからの中華は沿線がおもしろい Vol.3

サイサイショクドウ

蔡菜食堂

JR中央線/中野

左.ナンプラーとアンチョビの焼きそば¥850。具はホウレン草。シンプルながらクセになる味

右.トマト卵炒め¥850。トマトの甘酸っぱさと卵のまろやかさが絶妙。思わずご飯が欲しくなる

なじみの中華こそ真のごちそう
美味の記憶を刷り込む街場の中華

近所にあったらいいな――を実感する街場中華の基本形が、ここ中野にある『蔡菜食堂』だ。いつもニコニコと笑顔を絶やさぬご主人の蔡才生氏は、中国は上海生まれ。20数年前に来日してからは、あの『バードランド』で働いていたこともあるユニークな経歴の持ち主ながら、ご主人自身はあくまでも謙虚。

曰く「私は料理人じゃないからね。この店で作っているのは、上海で普通に食べられている家庭の料理が中心。私が子供の頃から親しんできた味ばかり」だそうで、こちらで供される料理はいわば、蔡家のお家ごはん、といったところだろうか。

なるほどメニューを見れば、「里芋のネギ炒め」や「ねぎワンタン」、「春雨と白菜と肉団子のスープ」等々、気取りのない普段着の味が並んでいる。平凡だけれども、しみじみと旨い。そして、毎日でも食べられそうに思うのは「油を控えて薄味に作る」という、家庭料理ならではだろう。

たとえば、定番の「トマト卵炒め」にしても、あえて砂糖は加えず、トマト本来の甘味や酸味を上手に引き出し、やわやわに炒めた卵とのまろやかな味のコラボを楽しませてくれる。若くてよく食べる人には、心もちボリュームをもたせて、年輩の方ならちょっと味つけを薄めにと、食べ手によって味の匙加減を微妙に調整する。そうした心使いもいかにも家庭的だ。

左.青菜炒め¥700。写真は今が旬のちぢみほうれん草と菜花。ほうれん草のあまみが生きたひと皿

右.おつまみセット¥500。地鶏の老酒漬やくらげ大根など日替わりの前菜5~6種。価格もお値打

左.ご主人の蔡才生氏は58歳。もともと料理を作るのが大好きだったとか。上海の家庭の味が評判だ

右.15~16人でめいっぱいの小体な店らしく、料理は全体的に少人数向けの小皿ポーション

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