新婚クライシス Vol.10

深夜のタクシーから手を振る、若く美しい女。夫が冷たくなった理由を、妻が知ってしまった夜

―大好きな吾郎くんが、私と結婚してくれたー

数々の苦難の末に、結婚願望のない男・吾郎との結婚に辿りついた英里。

結婚はゴールでないことなど、百も承知。

しかし、そんな二人を待ち受けていたのは、予想を上回る過酷な現実であった。

愛し合っていたはずの夫婦は、どのようにすれ違い、溝ができてしまったのか。

男女の価値観のズレ、見解の相違、そして、家庭外での誘惑...。

二人は “新婚クライシス”を迎え、夫婦のすれ違いは深まるが、英里はそんな中、「子どもが欲しい」と吾郎に宣言した。夫婦仲はさらにギクシャクしたまま、英里は後輩・新一に心を開き始め、そして吾郎まで後輩の女弁護士・ナオミと意気投合してしまう。


「おい吾郎!お前、ナオミちゃんと二人で飲みに行ったんだって?!」

オフィスで顔を合わせるなり、同僚の松田は鬼の形相で吾郎に近づき、腕を強く掴んだ。

ナオミは松田のチームの部下であり、お気に入りの若い女弁護士である。よって彼は、吾郎に見当違いなヤキモチでも焼いているか、あるいは飲みに誘われなかったことに腹を立てているのだろう。

「何だよ。イヤー・エンド・パーティのあとに軽く飲んだだけだ。お前は嫁の世話で忙しそうだったからな」

「...吾郎、嫁さんと仲直りはしたのかよ?」

「.........」

「いよいよマジでヤバいんじゃないのか?お前、現実逃避してるだろ?」

松田の尋問に、吾郎は思わず答えに詰まる。

現実逃避などと言われると苛立たしいが、夫婦仲の拗れに関しては、開き直りのような感情が生まれていたのは事実だった。

英里が大事な存在であることに変わりはないが(なんせ、この自分が結婚までしたのだから)、妻と自分の間には、どうやっても擦り合わない価値観や人間性の違いが存在する。

ならば、ある程度の距離を保ちながら適度にドライな関係でいるのも、それはそれでアリな気がしたのだ。

そんな風に世間の常識や風潮に流されない本来の自分に戻れたのは、おそらくナオミの影響であった。

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