恋の大三角形 Vol.8

恋の大三角形:30歳の誕生日。2年付き合った商社マンの彼が言い放った、無責任な言葉

東京を生きる女たちは、もう気がついている。

「素敵な男の隣には、既に女がいる」という事実に。

自分が好きになるくらいの男を、他の目ざとい女たちが見過ごすはずがないのだ。

不動産会社で秘書をしている繭子(29歳)は、商社勤務の洋平(30歳)と付き合って2年になる。

30歳までに結婚を決めたい繭子だが、誕生日を目前にしても彼からプロポーズの気配がなく焦りを募らせる

第六感が働いた繭子はある夜、なかなか既読にならないLINEに嫉妬心を募らせ深夜に家を飛び出す

洋平はそんな繭子を優しく宥め、ふたりの関係は改善したように思われたが…。


すれ違った女


リズミカルだったはずの洋平の相槌がワンテンポ遅れた気がして、私は右隣を歩く彼の視線を追った。

すると今しがたすれ違ったばかりの女性に、目が止まる。

ふわりと揺れる巻き髪、ツイードのミニ丈スカートというファッションから、20代半ばだろうと私は推察した。

私に気づいた彼女と目が合い、その大きな瞳に宿る眼力に、私は本能的に構えた。

「今の子、知り合い?」

洋平の腕を掴んでいた手に力を込めると、彼はすぐさま私に向き直って首を振る。

「いや、知り合いに似てるなと思っただけ。でも違った」

彼の回答は心の片隅に小さな引っかかりを残したが、その正体を突き止める前に洋平が話題を変えた。

「そうそう!繭子の誕生日、喜びそうな店予約したから楽しみにしてて」

「…えー、どこだろう?楽しみ」

引っかかりを飲み込むようにして、私は慌てて笑顔をつくった。

繭子の好きそうなところだよ、と彼は笑って私の顔を覗き込み、そして噛みしめるような言い方で、こう呟いた。

「…繭ちゃんもついに、30歳かぁ」

その言葉を、洋平はどういう思いで口にしたのだろう?

私は静かに彼の表情を盗み見たが、洋平の本音はまるで読み取れなかった。

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