LESS~プラトニックな恋人~ Vol.8

LESS〜プラトニックな恋人〜:“正しい愛”なんてない。身体の繋がりが、心を凌駕した夜

女というものは


愛は、心で育むもの。

私だって、ずっとそう思っていた。

けれどもたった今、身体の繋がりが時として心を凌駕することがあるということを、私は知った。


「瀬尾さん…好き!」

私が叫んだのと、ふたりが欲望を弾けさせたのは、ほぼ同時だった。

私は思わず口から出た言葉に自分で自分に驚いたが、しかしそれは決して、嘘でも演技でもなかった。

瀬尾さんは、激しく、情熱的に私を抱き、至るところに唇を這わせた。私の存在を確かめるように、堪能するかのように。

そしてそんな彼の動き一つ一つが、私に快感以上の潤いを与えてくれたのだ。

瀬尾さんが私に与えてくれたもの。…それは、女としての自信だった。

もう我慢できない、と言って、彼が少々荒々しく私の中に入って来た時も、私は自分が女として強く求められていること、そして私の存在が彼を喜ばせているという事実が嬉しかった。


“ある人間が他の人間をもっとも喜ばせるもの、それは官能の喜び、ただ官能だけ”


そう言ったのは、ココ・シャネルだったか。

倒れるように横たわった瀬尾さんの腕に、そっと頬を寄せる。少し汗ばんだ匂いに包まれ、私は何年かぶりの、満ち足りた余韻に浸りながら瞳を閉じた。

…私は、健太に愛されていた。

いや、今でも彼は私を愛してくれているのだろう。そして私も、彼だけを愛していた。今、この瞬間までは。

私と健太の間は、確かにかけがえのない絆があった。

精神的な繋がり、それこそが愛なのだと、ずっと信じていた。

だからこそ、付き合いが長くなり抱き合う回数が減っても、そして完全にレスになってしまった後でさえも、私と健太は相思相愛なのだと、そう自分に言い聞かせてきたのだ。

健太は、レスであることを「大した問題じゃない」と言った。

彼にとってみれば、そんなものとは比べものにならない高尚な愛を私に与えている、そう思っているのだろう。

しかし私は気づいてしまったのだ。

私には…女には、高尚な愛だけでは、決して満たされない空間がある。

隣で寝息をたて始めた、瀬尾さんの無防備な横顔を静かに眺めながら、私は以前、百合さんが語った言葉を思い出していた。

「ある出来事があって私、気づいたのよ。私はやっぱり女で、女の性には抗えないってことに」


▶NEXT:12月26日 火曜更新予定
瀬尾さんとの未来を選んだ美和子。しかし、再び心乱される出来事が。

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