はいすぺさんが通る Vol.10

「こうして僕は身を引いた」。男が語る、はいすぺさんとの一筋縄ではいかない恋愛

容姿、学歴、収入。男のスペックは高ければ高いほど良い。

が、同じだけのスペックを女が持ち合わせたとき、果たしてそれは本当に幸せなのだろうか。

東大卒・外銀勤めの楓はいわゆる「ハイスペック女子」。

4年ぶりに再会した憧れの人・須藤淡い恋心を抱くも、相手は楓のことを優秀な人材としてしか見ておらず、自身のファンドへ誘ったのだった。

須藤は何故、楓を彼のファンドに誘ったのか?彼の口から語られるはいすぺさんとは。


数か月前、近所のワインバー『Le Caviste』で偶然高野さんに再会した時は、驚いた。

高野さんとは、以前近所にあったワインバーで4~5年前に知り合った。

その店には、昨年妻との別居を決め青山から西麻布へ引っ越して来る前までは毎週のように顔を出していた。

そこで接客全般を担当していた彼女は、いつもどの客にもよく目を配り、接客も気が利いていたから、若いのにしっかりしているなと感心したものだ。

卒業してから、他社とはいえ自分と同じ外資系投資銀行に就職したと聞いた時には、驚くと同時に少し寂しい気持ちになったことを思い出す。

この業界に入ってきて、まるで別人のように変わってしまう人は少なくない。

尋常なレベルを超えて要求水準の高い人々に揉まれ、日々神経を擦り減らすうちに、心を病む人も少なくはない。

そこまでいかずとも「難アリ」な性格に歪められる人は多いため、あの朗らかな笑顔はもう見られないかもな、と一抹の切なさを感じた。

だからこそ、その晩3~4年ぶりに彼女と再会し、以前と変わらず明るく笑う姿を見たときには、心底嬉しく思ったものだ。

しかも、久しぶりに再会した彼女は、社会に揉まれたからか、人としての魅力を数段増していた。

店で話していた時も、一言一言に知性を感じるな、とは思っていたが、その晩の彼女は、若々しい真っすぐさと、少しの憂いとが並存した、不思議な魅力を備えていた。

その晩、彼女の少し熱っぽい目に見つめられ、食事に誘われた時には、仕事以外で久しぶりに気分が高揚するのを感じたのだった。

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