忘れられない男 Vol.11

忘れられない男 最終回:大好きだった彼が、突然失踪したワケ。女の“失われた3年”に決着の時

春香が、24歳のとき。

心から愛していた男が、ある日忽然と姿を消した。

その日から、春香の時計の針は止まったまま。食事会に行っても新しい恋人が出来ても、まとわりつくのはかつて愛した男の記憶。

過去の記憶という呪縛から逃れることのない女は、最後に幸せを掴み取る事ができるのか?

3年前に姿を消した原因をさぐるために祐也に会ったものの、もう一度やり直そうと言われ戸惑う春香。同時に慶一郎からも話があると言われる。

2人から全く同じ日に呼び出された春香が向かった先とは—!?


「どういうことなのか、きちんと説明して欲しいの」

強い口調で言う春香の視線の先には、怯えたように視線を落とす慶一郎の姿があった。

「私と祐也のこと、全て知っていて私に近づいたって…本当なの?」

慶一郎を問い詰めながらも、春香の胸の中は、どうか嘘であって欲しいという気持ちで一杯だった。

しかし慶一郎は、しょんぼりとした表情で答えた。

「ごめん…その通りだ」

そして、一つずつ順を追ってゆっくりと説明をしていく。

祐也とは大学時代から知り合いだったこと。当時からFacebookを見て春香の顔を知っていたこと。そして3年前に祐也が春香を捨てて逃げたのを知っていたということも。

「大学時代、俺、別れた彼女のこと引きずってたって言ったよね…」

慶一郎は遠い目をして語る。

ちょうどその頃は就活の時期で、慶一郎はどうしても入りたかった第一志望の銀行に落ちたばかりだった。ところが祐也は、そこの内々定をもらっておいて、銀行なんて興味ないとあっさり蹴って今の会社に入ったのだと言う。

慶一郎は話しながら、時折悔しそうな表情を見せた。

「就活も思い通りで、春香ちゃんみたいなかわいい彼女もいて、なんであいつばっかり人生楽勝なんだろうって思ってた。別れたことを聞いたときは、俺だったら絶対に、あんな可愛い子を捨てたりしないのにって思ったんだ」

そしてある日たまたま、春香と会った。顔を見てすぐに祐也の元彼女だと気づき、運命だと思ったという。

「知らなかったふりをしていたことは謝る。きっかけは確かに祐也だったけど…でもそのあと本気で春香ちゃんを好きになったんだ。それだけは嘘じゃないって信じて欲しい」

「…わかった。それは信じるよ」

春香が答えると、慶一郎はぱっと表情を明るくする。

「ほんと?だったら俺と…」

しかし春香はきっぱりと言った。

「ごめん…慶一郎君の気持ちには、答えられない」

そして椅子から勢いよく立ち上がる。

「私、行くね。まだ、やらなくちゃいけないことがあるの。今度こそ、本当に蹴りをつけなくちゃいけないことが」

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