東京カレンダーをご覧の男性であれば、スーツや時計、靴などには気をつかっているはずだ。ここに紹介する丸の内の商社に勤務する彼も、30歳のオフィスワーカーとしてはどこに出ても恥ずかしくない装いであると自負している。けれども、時としてこんなことも思うのである。
「少し飽きたかも……」
そんな彼が、初めてメンズジュエリーに出会った時のストーリー。
デキるビジネスマン、悩む...。
マンネリファッションから脱却したい!!
スーツにしろ靴にしろ、オフィスでの装いにはルールがある。黒い靴には黒いベルトを合わせる。スーツにクロノグラフやダイバーズウォッチを合わせるのは御法度。そうしたルールを守らなければ、“2流”の烙印が押されてしまう。
それはわかっているけれど、今までとは違うチャレンジをして、刺激を受けたいのも事実だ。
異業種交流会で知り合ったばかりの女性にそんな風にボヤいたのは、彼女がアパレル関係のPRの仕事をしていると聞いたからだ。
「だったら、男性用のジュエリーなんかどうです? 気分転換になると思いますよ」
「ジュエリー?」
彼女のためではなく、
”自分のためのジュエリー”を選ぶという新体験
正直に言って、彼は自分がジュエリーをしている姿が想像できなかった。中高一貫の男子校で育ち、大学でも体育会。男性がジュエリーをまとうという文化にふれてこなかったからだ。
けれども一方で、ロックミュージシャンやサッカー選手など、自分が憧れてきた男性はジュエリーを着こなしていたことも思い出した。
彼女が案内してくれたのは、田中貴金属ジュエリー(GINZA TANAKA)銀座本店だった。
「品揃えは本格的なのに、カジュアルで入りやすい雰囲気だからジュエリー初心者にはぴったりのお店だと思います」という彼女のセリフに後押しされて、店内に足を踏み入れる。
いつもとは勝手の違う彼をよそに、彼女はなんだか楽しそうな様子。
生まれて初めてジュエリーに囲まれてきょろきょろしているうちに、彼女は「これなんか絶対に似合うと思いますよ」といくつかセレクトしてくれた。
あれ?もしかして俺、テンション上がってる?!
彼が試着したのは、希少性が高いプラチナのキヘイネックレス。フォーマルな装いにもすんなりと溶け込む。
そして、自分でも意外に思ったのは、ネックレスを首に掛けられた瞬間、フッとテンションが高くなったことだった。プラチナの控え目ながら透明感のある輝きによって、自分が少し洗練された人間になったような気がしたのだ。
「男も貴金属の輝きで気分がアガるなんて知りませんでした。キース・リチャーズやクリスティアーノ・ロナウドがいつもジュエリーをしている理由が、なんとなく理解できたような気がします」