東洋経済・東京鉄道事情 Vol.68

東京メトロと都営地下鉄。分かりにくい東京の地下鉄は、新体制のもと「一体化」できるのか?

地下鉄の一元化をめぐる議論が浮上したのは21世紀に入ってからだ。特殊法人改革の一環で営団地下鉄は2004年、国が53%、都が47%を出資する「東京地下鉄株式会社(東京メトロ)」に生まれ変わった。

早期上場が求められる中、都は「株を売ってしまったら一元化はできない」「都営地下鉄の経営は改善されていることから、一元化を議論するのに良いタイミング」(「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」議事概要より)と主張。

2010年に都と東京メトロ、国による「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」が立ち上がった。

だが、都が効率的な地下鉄運営に向けた経営一元化を主張したのに対し、国は優良企業であるメトロと多額の長期債務を抱える都営地下鉄とを一元化した場合、メトロの株式価値が損なわれると主張。サービスの一体化は経営の一元化を前提にしなくてもできるとの見解を示し、議論は平行線をたどった。

協議会は2010年8月から翌2011年2月まで4回開かれたが、経営一元化については「協議を続ける」との方向性を示すに留まった。一方で、乗り継ぎや運賃などのサービス改善については段階的に一体化を進めることで合意。「バカの壁」撤去もこの際に決まった。

その後、議論は2013年に設置された「東京の地下鉄の運営改革会議」に移行。こちらは最初からサービスの改善・一体化推進を目的に掲げており、議論の中心は課題の多い経営一元化より先に、合意の得られているサービス面での一体化へと移行した。

同会議は2014年1月に開いた第2回会議で「中間取りまとめ」を公表し、以降は開催されていない。

同じ距離でも高くなる乗り継ぎ

これまでに実現したサービス一体化の例としては、九段下駅の壁撤去のほか、東京メトロと都営地下鉄の接続駅で構内の通り抜けを可能にし、双方の出口を使える「改札通過サービス」の導入などがある。

一見すると動きのないように見えたサービス一体化の取り組みだが「実務者レベルでは意見交換を続けていた」(東京メトロ)という。

だが、利用者から見て、もっとも改善が望まれるのはやはり運賃の面だ。同じ距離であっても、メトロと都営の路線を乗り継ぐ場合は初乗り運賃が二重に発生し、同じ区間でもどちらか片方の路線だけを利用するより割高になってしまう。

たとえば新宿駅から三越前駅(中央区)間を地下鉄で移動する場合、乗車時間が短いのは都営地下鉄新宿線と東京メトロ半蔵門線の乗り継ぎだ。このルートだと、運賃は70円の乗り継ぎ割引が適用されて269円(以下、すべて運賃はICカード利用時)。

だが、東京メトロ丸ノ内線と半蔵門線の乗継ぎなら、乗車時間は長くなるものの運賃は195円。74円も差が出てしまうのだ。

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