赤坂の夜は更けて Vol.17

心から愛した女の、3年後。目を背けたくなる光景に、男のとった行動は・・・

夜更けの赤坂で、女はいつも考える。

大切なものは、いつも簡単に手からすり抜けてしまう。

私はいつも同じところで立ち止まり、苦しみ、前を向こうとして、またつまずく。

29歳、テレビ局の広報室で働く森山ハナは、ひと回り年上のプロデューサー・井上と出会う。

葵の画策により、井上のマンションの前で一緒に歩いていた女・静香と、バーで鉢合わせてしまった。


「彼のこと、何も知らないのね」

目の前に座る静香という女はあっさりとそう言って、その言葉にハナは激しく絶望した。

井上に一体、何があったのだろうか?

詳しく聞きたいが、悔しくて何も言い返せない。黙り込んだハナの気持ちを察してか、静香は何も言わない。その感じが、とても癪に障った。

「……じゃあ。私はおいとまするわ。彼女、大丈夫かしら?」

静香はそう言って、隣で寝てしまった葵に視線をやった。

本気で心配そうな表情を浮かべているが、この女は明日になれば、葵の名前なんてすっかり忘れているのだろう。

「大丈夫です」

きっぱり答えると、彼女は「なら良かった」と言って立ち上がった。そして、去り際にこう言うのだった。

「何も失いたくない恋なんて、する意味ないのよ」

その言葉の意味が分からず、ハナが「え?」と返すと、その様子には構わずこう続けた。

「あなた、きっと後悔するわ」

静香はそう言い残して立ち去り、ハナは葵と二人、ぽつんと取り残された。

今日はとても長い、夜だった。

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