私、美人じゃないのにモテるんです。 Vol.1

私、美人じゃないのにモテるんです:見た目だけの女なんて、相手にもならない

全員の自己紹介が終わった後、陽菜は「席替えしましょうか」と言い出し、早々に席を立ち始めた。

透け感がある、黒のワンピース。引き締まった優美な体のラインに、男性陣の目線が釘付けになる。


横一列に並んでいた中央の男性に「私たちが交換しましょう」とにっこり微笑む。両脇に男性2人を従えた陽菜は、ご満悦のようだ。

ワインを片手に、陽菜は輝かしい学生時代を嬉々として語り続ける。お酒が進むに連れて、興奮して早口になっていく。長い髪を何度もかきあげながら、自分自身にどんどん酔っていく様子が手に取るように分かった。

そんな様子を見ながら、莉乃は微笑を崩さずに、控えめにお酒をつぎ続けた。陽菜や男性陣の話に耳を傾け、頃合いのよいタイミングで質問をする。自分の話はほとんどしなかった。

陽菜はそんな莉乃に、全く興味がないと言わんばかりにほとんど目もくれない。莉乃が20分ほど中座して戻った瞬間に、「どこ行ってたの?」と非難がましく質問するくらいである。

ちょっと…、とにごす莉乃に対し、陽菜は「あ、そ」という表情で一瞥し、すぐさま男性との談笑に戻った。

こうして陽菜の独壇場と化したお食事会は、全員のLINE交換で幕を閉じた。



翌日の夜、莉乃のスマホが鳴った。

「ねえ、誰から連絡来た?」

莉乃と真央宛に、陽菜から送られてきたLINEだった。

「誰“か”から」と言わないあたりに、「私は、来ている」という前提で話を進めようとする陽菜のプライドが、透けて見える。

だが、莉乃は知っている。陽菜には、誰からも連絡が来ていないことを。

美人ってよく、私みたいな平凡な女を見下してくるけど…。


―見た目だけの女なんて、相手にもならない。


莉乃は微笑しながらメッセージを打ち、送信ボタンを押す。返事を待たずに、ぱたん、と軽やかにスマホケースを閉じた。

一秘密です♡昨夜の陽菜さん、面白すぎましたよ♪

▶︎NEXT:3月7日火曜更新予定
莉乃と陽菜のバトルが、ついに始まる?

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